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TOURISMのBigsのネタバレレビュー・内容・結末

TOURISM(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

すごく痛烈に今の日本の状況を炙り出そうとしてるように思いました。

世界情勢に無知で無関心だし、それどころか自分の身の回りでさえおざなりになってしまっている今を象徴する若者たち。そんな彼女らが海外に出てみて、自分の足で歩き、他人と会話し、目で見て、味わい、音を聞くことで何かを感じていく。
"無知"だと言ったけれど、これは決して見下してるわけではなく、自分もまさに無知で無関心な人間の1人だと思う。というより、多くの人が否定できないのでは。多くの人が無関心だった結果が今のこの日本の状況だしね。こういうことが作品内に含まれているように思う。

フムスを美味しいと食べてるけど、何処の国の食べ物か知らない。海外旅行に行こうと言うけど、イエメンやホンジュラスがどこにあるか、そこで何が起きてるか知らない。シンガポールに遊びに来たけど、途中立ち寄る塔が何なのか、日本が戦時中にシンガポールで何をしたのか知らない。そして、僕も旧日本軍が行った華僑粛清に対する「日本占領時期死難人民記念碑」のことを調べるまで知らなかった。
逆に知ってるのは、ブックオフ、TSUTAYA、ABCマート、フォーエバー21、ヴィクシー。関心があることも綺麗、美味しい、カッコいい、面白いくらいのもん。目の前のこと、見た目が良いこと、気持ちいいことくらいにしか興味がない。外国もテーマパーク的に楽しむだけ。彼らが自分からそうなったのか、社会がそう育てたのか色んな側面があると思うけど、そんな状況だと自分や身の回りの将来や他者のこと、ましてや世界情勢なんてどうでもいいのかもしれない。

シンガポールに行ってからも、ショッピングモールに行ってイオンと変わらなくね?とか、マーライオン見ても微妙じゃね?と言ってて、その無関心さは変わらないように思える。それが、携帯をなくし友人とはぐれて一人で歩き出すところから、大きく方向が変わっていく。同い年くらいの子との会話、一人で街を歩く、ある家族に招き入れてもらい手で食事する、屋上では聞きなれない演奏を聴く。何かこの旅で無関心から解き放たれて、何かを感じたり、外の世界を理解することの入口に立ったような気がする。

主演二人の魅力が大きいのと、独特のカメラワークによって、あまりチープな感じはしませんでした。
日本のパートでは、若者たちの共同生活、安そうな食い物と服、そして常に汗ばんだ体からアメリカンニューシネマの匂いも感じたりした。

幽霊の話とか、時折笑っちゃうような変な会話も魅力的。海外旅行の行き先を決めるときの会話も笑った。「帰ってこれないよ」
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