ひでやん

ヘレディタリー/継承のひでやんのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.7
祖母の死をきっかけに狂い出す家族の悲劇。

「21世紀最も怖いホラー映画」として絶賛された今作は、ビクッと飛び上がる怖さではなく、じわじわと精神を蝕む気持ち悪さがあった。胸中にベッタリと何かが纏わりつく不快感を覚えつつ、他とは一線を画す巧みな演出に引き付けられた。

カメラがミニチュアハウスの一室へとクローズアップしていき、それが実際の部屋へと繋がる冒頭に「おー」と思わず声を出した。鑑賞後にそのファーストカットを思い返すと、メタファーになっていた事が分かる。ミニチュアを制作するアニー、その一家をドールとして俯瞰で見る悪魔視点。初っ端から素晴らしい演出だ。

大きな音で驚かせず、舌を鳴らす音で不気味にさせたり、暗闇の見えない恐怖より、見える謎の光で表したり、上下逆さの演出があったり、怖がらせ方がお化け屋敷にならなかったのが良かった。ピーターの部屋の壁に何かが張り付いているのがぼんやりと見え、それがアニーとして現れる終盤の演出が特にいい。

降霊術とか悪魔崇拝とかが出てくると、なんか怖さがなくなってしまうのだが、継承されるシナリオは悪くなかった。何が怖かったかっていうと「顔」だね。まずはピーター。車の悲劇から翌朝の悲鳴まで、まるで魂を抜かれたかのような茫然自失の表情が凄い。そして、なんといってもアニーを演じたトニ・コレットの顔芸。悲しみに暮れ、怒りを爆発させ、歪んだ顔で絶叫する渾身の顔芸が見応えあり。彼女にアカデミー賞顔芸部門を贈りたい。

想定内のラストで衝撃はあまりなかったが、現実にあったらゾッとする。
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