シュローダー

ヘレディタリー/継承のシュローダーのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

徹頭徹尾"厭"な映画である事は確かだ。コミュニケーションのすれ違い 言ってはいけない事を言ってしまう事 ノイズとなる音 見たくない光景 それらの要素は今年度でも随一と言える。特に、食事シーンの最悪さは一周回って最高だし、家族が本格的に狂い出す妹チャーリーの死の場面はもう目を背けたくなるほどに悲惨である。しかし、それが"恐怖"に繋がっているかと聞かれれば、僕は疑問符をつけざるを得ない。何故ならば、結局事の真相がカルト集団の悪魔信仰という言ってしまえば"ショボい"真相だからだ。120分と尺を、よく言えば贅沢に、悪く言えば鈍重に使って描かれるのがこんなシンプルな動機、しかも、本当に悪魔が取り憑いてしまうという直球すぎるオチを付けられてしまっては、こちらも非常にモヤモヤした気分で劇場を後にする事となってしまった。恐怖描写も、前半部分の「人間の浅はかな怖さ」を描いたパートとは対象的に、どんどん超現実的な絵面が続く。その状況の予兆として、母アニーの夢遊病という症状が提示されるが、この時点でかなりどうでも良くなってしまった。そして、いざ母アニーの奇行が始まると、怖さよりも笑いの方が先行してしまった。特に、息子と追いかけっこをするシーンや、天井に取り付いて頭突きをかますシーンなどは、劇場で思わず失笑が漏れてしまった。この場合「笑うしかない程怖い」という訳ではない。「ギャグなんじゃねぇかと思うほどだった」から笑ってしまった。その果てにあのオチが来るのだから、何とも言えない気分になる。総じて、高まった期待値から言えば、残念な映画に終わったという印象。まあ、監督の実体験が元になっているというのだからあまり脚本にどうこう言っても仕方がないが。細やかな伏線回収と、前半の展開は非常に良かったのだが、後半で全てが崩壊してしまったと言えよう。結局「エクソシスト」かよ! という思いは払拭できない。絶賛ムードも納得は出来るが、僕の肌には合わなかった一作