柏エシディシ

ヘレディタリー/継承の柏エシディシのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.0
本当の意味で怖い映画、キました。

この映画のホントタチ悪いのは、まず、我々が日常で時折感じ取ってしまう「あの感覚」を思い出させてくること。
あれ、今なんか見ちゃったかも。
聞こえちゃったかも。
誰もいないはずの隣の部屋にナニかいるかも。っていうアレ。

そしてそこをベースに、その正体にある仮定を映画の中では一旦、提示し飛躍しつつ(と敢えて申し上げておく。そうでもしないと、この映画を観てしまった我々全員気が狂ってしまうだろうから)、
最後にジョニミッチェルの「青春の光と影」を流しつつ、また我々を日常に連れ戻して来る、、
"わたしはほんとうの人生のことをまったく知らなかった"
もう、映画を観る前の日常には戻れないのだ、私達は。
これほどの力がある映画を怖がらずにいられるだろうか。

主人公アニーのジオラマ製作というモチーフや、敢えて俯瞰を多用した中盤までの映画の構成も、「映画を観ている」という感覚を観客に意図的に感じ取らせる事によって、我々の生そのものが、なにかより高次のモノから見られているという事を示唆している一種の入れ子構造になっているのも見事だし、本当にこの監督、やらしいわぁ。
アニーがトラウマと向き合う様にジオラマに没頭していくように、何か説明出来ないモノと対峙する為に、私達は映画を作ったり、観たりするのかもしれませんね

キャスト陣は揃って素晴らしいですが、アニー役のトニ・コレットがとにかく凄まじい。後半の畳み掛ける様なハイテンション演技はもちろん驚異(脅威?)なんですが、そこまでに至る作品の不穏さの積み重ねをリードする決定的なパフォーマンスの説得力。考えてみれば、この人を認識したのは「ミュリエルの結婚」だと思うけれど、そこからもう20年以上第一線で活躍してる。そろそろオスカー、よろしいんじゃないでしょうか。

エクソシストのリンダブレアを越えたと言って良い存在感のミリーシャピロちゃんも怖過ぎです。オフの写真を拝見すると普通に可愛いのに、なんですかねーアレは(褒め意)

どこかで観たことある様で観たことのない独特な演出や編集のリズム。監督のアリ・アスター。凄い才能がまた出てきましたね。次作もジャンル的にはホラーの様ですが、ちょっとその枠組みから外れた作品も観てみたい。
柏エシディシ

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