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いつだってやめられる 闘う名誉教授たちのnのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

終わってみれば彼らの青春映画だったんだろうかというぐらい、こんなに爽やかで切ない余韻が残るとは。ひたすらしょうもなかった一作目のことを思うと感慨深いにもほどがあるし、とにかく完結してしまったのが寂しくて仕方ない。最後にシリーズの名場面を振り返るメモリアルムービーみたいなオマケ映像がついていたら、たとえピエトロがレザーパンツを履くシーンでも普通に泣いていたと思う。悔しい。
 
ギャグにも前作までの危うさがなくて心置きなく楽しかったし、ムレーナの再登場&大活躍から、三作目にして遂に訪れた人文系代表マッティア&ジョルジョの(涙なくしては見られない)本領発揮の機会、果てはすべての発端になった講義室の電気設備の故障まで、今や懐かしいネタが次々回収されていくのも実に小気味よい(バルトロメオのTNFが結局どうなったのかは非常に気になるけれども…)。

何より、アカデミアに見捨てられた元研究員たちが学問の未来のために一念発起、一致団結して人知れずダークヒーローとして大学を救うという、まさかの大団円である。「現代最高の頭脳集団」の「名誉挽回」は秘かに、彼ら一人ひとりの心の中で達成されるのだ。かっこよすぎるだろこんなの!!バットマンかよ!!ピエトロのくせに!!

ルイジ・ロ・カーショ演じる悪役だなんてさぞかし哀しい事情があるに違いない、おいたわしや…と観る前から思っていたら案の定、エモ&アモーレ全開の平常運転で一人だけ違う映画に出てるんじゃないかという勢いだったけれども(ヒゲも眼鏡も作業着も素敵すぎかよ)、「彼も僕たちと研究者なんだから話せばわかるはずだ」とピエトロも言うとおり、ヴァルテルもかつてはただ希望と情熱をもって研究に取り組んでいたのであり、そこから絶望と悲嘆のあまり闇に落ちてしまった姿には胸が痛む。

そして、最後に大学を救うのもやはり、元研究者たちが絶やさず持ち続けた学問への情熱であり、学生たちの未来を思う良心である、という展開が最高に熱かった。

一度はヴァルテルの復讐を良しとしたムレーナは現役学生たちの姿を見て翻意し、ピエトロは「後輩のためにテロを思いとどまってくれ」と訴え、最後は「卒業したらどうする?」「何とかなるさ」という学生たちの会話で締めくくられる。そこで現れるタイトルロール "SMETTO QUANDO VOGLIO" 「やめたいときにやめる」=「いつだってやめられる」は今までずっと「やめるやめる詐欺」的なダメダメ感満載のフレーズだったけど、今回は「やりたいことはやめたくない限りやめなくていいんだ」という意味に聞こえて感動してしまった。励ましのような決意表明のような、若者がこんな風に思える社会であるべきだというメッセージのような。

研究員ギャングたちは刑務所に戻るけれど、たとえ正規の研究職ではなくても、彼らもそれぞれどうにかこうにか自分なりに好きなことを続けていくんだろうなと自然に思える、限りなく元学生に優しいラストだったとも思う。愛を込めて満点です。
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