凛

多十郎殉愛記の凛のレビュー・感想・評価

多十郎殉愛記(2019年製作の映画)
3.9
完成披露試写会@丸の内TOEI
高良健吾・多部未華子・木村了・永瀬正敏・寺島進・中島貞夫監督

84歳の中島貞夫監督が撮った伝統的なチャンバラ時代劇。

幕末の京。
長州藩から脱藩してきた清川多十郎(高良健吾)は親が残した借金から逃げるためだった。元々は剣の腕の良い侍だったが、大義も夢もなく日々を過ごしていた。
桂小五郎(永瀬正敏)の警護をして欲しいと頼まれても乗り気ではない。
小料理屋の女将・おとよ(多部未華子)は何かと多十郎の世話をやいてくれるが、その想いに気付きながらも、敢えて一人でいようとする。
長州藩から腹違いの弟・数馬(木村了)が上京するが、剣の腕は今ひとつなので心配で仕方がない。
脱藩浪人の取り締まりを強化していた京都見廻り組が多十郎の捕縛へ動き出していた。。

最近の一人で100人斬るような殺陣ではなく、泥臭く生々しいチャンバラ。
御用の提灯の灯りの列、長屋の中を逃げ回る、とにかく土の匂いが感じられるリアル。刀を振り回してとにかく走る。
抜刀隊隊長(寺島進)との一騎打ちは最高に緊張感溢れる。
様式美に彩られた時代劇、昭和にはこういうのがたくさんあった。

多部未華子がワケありの女らしく、素直に気持ちをぶつけられない切なさを丁寧に演じている。
高良健吾の気迫は物凄い。
目力の強さ、身のこなしの美しさ、翳りのある表情、身体全体で醸し出す色気。
殺陣も全力でやりきった感があり清々しい。

監督の京都東映撮影所イズムを、若い俳優が体現した。
伝説の斬られ役、福本清三が今回も華麗に斬られている。
凛