シュローダー

バーニング 劇場版のシュローダーのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
3.8
前半、前半だけなら文句無しの傑作なのに… 肝心のミステリー展開が始まってから一気にクールダウンしてしまう惜しすぎる作品になってしまった。アルバイトで生計を立てる小説家志望の青年ジョンスは、幼なじみの女性ヘミと偶然再会し、彼女がアフリカ旅行へ行く間の飼い猫の世話を頼まれる。旅行から戻ったヘミは、アフリカで知り合ったという謎めいた金持ちの男ベンをジョンスに紹介する。ある日、ベンはヘミと一緒にジョンスの自宅を訪れ、「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」という秘密を打ち明ける。そして、その日を境にヘミが忽然と姿を消してしまう。ヘミに強く惹かれていたジュンスは、必死で彼女の行方を捜すが……
このプロットを聞き、何故僕が劇場に向かおうと思ったか。それは、僕のオールタイムベストの1本でもある「アンダーザシルバーレイク」の様な話だと思ったから。つまり、恋愛にはてんで不器用な男が、失踪した愛する女を追い求める。僕好みのプロットなのだ。しかし、蓋を開けてみれば、女の失踪から"衝撃的"と言われているラストに至るまで、非常に凡庸かつ簡単に想像がついてしまう話であった。基本的にこの映画の結末及び真相については、3通りの解釈が考えられる。吉良吉影型か、ノルウェイの森型か、未来世紀ブラジル型か。いずれの解釈にしても、僕の興味を引くには敵わなかった。何故なら、どの結末にしても紋切り型の域を出ず、そこに内在する葛藤やテーマとやらも、過去に目撃した経験のあるものであったからだ。高尚なガワをしといて中身はしょうもないという部分まで村上春樹的にされてしまうと非常に萎えてしまう。勿論良い所もある。前半部のあのスローながらズッシリと重たく進む人間同士の会話の演出力は流石であった。誰もが指摘するであろう序盤のセックスシーンのエロさたるや。ヘミ役のチョンジョンソさんが発揮するメンヘラのあざとすぎる可愛さと、僕の好みド直球の貧乳が輝く。そして、この映画のテンション的な頂点を迎える、夕日を背にした半裸でのダンスシーン。あそこに限らず、全体に通底する長回し撮影はどれも素晴らしかった。総じて、前半部だけなら文句無しの傑作であった。村上春樹の良い所と悪い所を同時に確認出来る作品だ。