のほほんさん

LETO -レト-ののほほんさんのレビュー・感想・評価

LETO -レト-(2018年製作の映画)
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OPのコンサート(ライブではない)シーン。
ロックバンドの演奏なのに、観客は座って大人しく見ることを強いられている。
せいぜいリズムを取るくらい。

ロックは元々体制に噛み付くものだと思うけど、ロックをやること、西側の音楽を聴くこと、それそのものが反体制でありロックだ。


途中何度か「これはフィクションだ」とカメラに伝えてくる男性が現れる。その前後で確かにフィクションだな、という歌のシーンが挟まるのだが、自由に表現することと虚飾性の関係性みたいなものを感じさせられる。
特に、ロックな格好を咎めてくる老人や取り締まりの人を相手取って電車の中で「サイコ・キラー」を歌いながら大暴れするシーンがあるのだが、勿論フィクションなそのシーンで炸裂するロック魂が無茶苦茶格好いい。
このシーンに関してはそれこそノリノリで観たいとこだから、コンサートシーンの観客みたいな気持ちになるぞ(笑)

パンク君が映像の中に飛び込むシーンもあったり、本作では虚飾性をあえて前面に出して来ているのを感じる。


カリスマ的な存在のマイクだけど、彼も生きる為には仕事(夜間警備?)をして生きるという現実面もある。
彼の妻のナターシャは若いヴィクトルと淡い恋愛関係みたくなるが、マイクはヴィクトルにキスをしたいというナターシャの告白を受けてもそれを受け入れるし、その上でヴィクトルの音楽作りやアルバム制作に協力する。
ナターシャとヴィクトルの為に家を空け、ずぶ濡れになって外で過ごすという、なかなか凄い状況も。そこで歌われるのがルー・リードのパーフェクト・デイなのが輪をかけて凄い。


ヴィクトルに全てを与えるようなマイクの心理は想像するしかないのだけど、サングラスを外すと虚無感が宿る彼の目つきにはアーティストとしてのエゴが感じられない。
ヴィクトルになにかを託したい、その為に自分が出来ることをする、みたいな気持ちなんだろうか。


本作の監督は無実の罪で逮捕され、軟禁中にこの作品を完成させたのだという。
実話を元にした本作だけど、彼の反骨心というかロック魂が透けて見えるようだ。


あまり深いこと考えずとも、劇中でかかる音楽と映像を見るだけでも楽しめる。海辺で青春の輝きがパッと弾けるシーンも良い。
以前に観た「ブレイク・ビーターズ」を思い出したが、体制に締めつけられても若さはその中で輝きを放つのだなあ