怖くなる寓話だった。現代に聖人は存在できるのかという。
設定されたキャラクターとはいえ、無垢な「聖人」であるラザロは搾取されていた村人を解放するような存在でもある。
村人は感謝しているが、辺鄙だが幸福感に溢れた山間の村から都会に移り住んだ結果がどうだったのか。そのあたりもしっかりと描いている。
そもそも、人口が集中する都会の生活は幸福なのか。
純粋無垢な「聖人」のような人物は、そこで生きていけるのか。
人を疑わず正直すぎるということは、「変」に思われ危険視される。ラザロの危うさをリアルに描いた監督の意図や問いかけは重い。
いろいろ考えさせられる映画は多くあるが、振り返れば振り返るほど考えさせられる。優れた映画だ。