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存在のない子供たちのNのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.5
2023.3.22(Wed)
公開当時チラシを見かけて気になりつつ観れてなかったのですが、サ終前のGYAOにあったので即鑑賞。

ストーリー自体がよく出来ていてすでに十分しんどいのですが、ゼイン役の子の演技が本当に上手で、ドキュメンタリーを観ているようなリアリティと痛切さがありました。
体はまだまだ小さくて細くて、肉体的には年相応の子供。自分より大きい荷物を運んだり、自分より少し小さいだけの赤ちゃんのお世話をしたり、ゼインが手にするものとの対比でそれがより強調されている。でも生き抜くためのしたたかさ(?)、そして常にどこか物憂げな様子の表情は全然子供じゃない。この肉体と精神のアンバランスさが醸し出す独特の雰囲気が絶妙で惹きつけられました。
そこに惹きつけられると同時に、親からの酷い扱いとか過酷な労働とか、小さい子供相手に隙あらば搾取しようとする大人たちの汚さとか、ゼインがそうなるに至った環境に胸が苦しくなりました。でもこの独特の雰囲気が演技で出せるってどういうこと...??と思ったら、実際似たような背景を持っているそうで...。幸せになってほしい...。ゼイン役の子が見たくて2回観てしまった。

ストーリーはとにかくゼインが気の毒でしかなかったです。子供たちを道具としか思ってないゼインの親は論外として、ヨナスのお母さんみたいに貧しくても子供を護ろうとする親がいたところで、結局貧困には勝てないという現実。
でも同じように貧しくても親から愛情を注がれているヨナスに対して、少なからず思うことはあっただろうに、ちゃんと面倒を見るゼインが本当にいい子すぎました。
妹思いのいいお兄ちゃんだし、心はちゃんと優しい子なのが、犯罪に手を染めるのは社会のせいであることをより浮き彫りにしていました。

日本ももうオワコンだと思っていたけど、日本に生まれたことをありがたく感じました...。
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