順慶

誰もがそれを知っているの順慶のレビュー・感想・評価

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)
3.8
スペインの田舎町で起こった娘イレーネの誘拐事件。そして身代金の請求。

イレーネの母のラウラは、幼馴染のパコと付き合っていた。今はそれぞれ結婚し、幸せに暮らしているが、その村ではみんなが知っていること。
タイトルの「誰もがそれを知っている」の「それ」とは、そのことではない。もっと機微な問題だった。「えっ。知らなかったけど、知ってたの?」とか「黙ってたのに知ってたの?」とか、田舎の噂が広がる感じがおもしろい。

一応犯人探しのミステリーなんだけど、そんな事件そのものや犯人の動機とかはどうでもよくて、その事件を発端から家族付き合いのギスギスが明らかになっていく。
「この際だから言っとくけど」っていうセリフは、恐怖でしかない。「えっ。そんな風におもってたの?」という関係がヒリヒリする。
そして、「犯人はよく知っている身近な人間だ」言い残す男。横溝正史かよという展開なんだけど、もちろんトリックを楽しむ作品ではない。

アスガーファルハディ版「そして父になる」かと思いきや、残念ながら父になることができなかったパコ。パコの微妙な表情がなんとも言えず切ない。
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