カツマ

REVENGE リベンジのカツマのレビュー・感想・評価

REVENGE リベンジ(2017年製作の映画)
3.7
燃え盛る業火。燃やし尽くした復讐の炎は不気味な色を帯び、一人の女性を修羅の鬼へと変貌させる。そのリベンジ、容赦なし。いや、そもそも容赦など不要であった。果てなき荒野を監獄にして、狩る者と狩られる者が入れ替わる。死神の鎌はすぐそこに、戦士と化した彼女がクズ野郎たちをこれでもかと殲滅する、タイトル通りの復讐劇の幕が開く。

フランスの俊英コラリー・ファルジャが、世界にそのマッドな才能を知らしめたフレンチ産リベンジスリラー。女性監督によって描かれた女性による復讐劇ということもあってか、野郎どもへの手加減なしの惨殺具合は気持ちが良いほど。トロント映画祭の『ミッドナイトマッドネス部門』で話題を呼んだ、という舞台設定も完璧。間違いなくカルト臭はするけれど、そのバイオレンス描写にはキラリと光る美学があった。

〜あらすじ〜

そこは砂漠地帯にポツンと佇む豪奢な別荘。セレブのリチャードと不倫関係にある若きジェニファーは、邪魔の入らない場所で2人だけの蜜月を楽しんでいた。本来はジェニファーとリチャードだけの時間のはずが、次の日、別荘にリチャードの狩り仲間の男友だち二人、スタンとディミトリが訪ねてくる。彼ら二人は予定よりも早く着いてしまったそうで、そのせいでジェニファーは彼らと出会うこととなってしまった。
それでもその夜は4人でのゴージャスな宴を楽しみ、何事もなく迎えた翌朝。ジェニファーに粘着質な視線を向けていたスタンは、リチャードの留守を盗んで、彼女を強姦。それをディミトリは見て見ぬフリをする始末。傷ついた彼女をよそに、帰宅したリチャードの対応は冷たかった。ヘリで帰ろうとするジェニファーを断崖絶壁へと追い詰め、そして・・。

〜見どころと感想〜

まずは今作がフランス映画である、という部分がポイントだろう。フレンチらしいアート感覚が全編を彩っており、オシャレなカットが頻発。ほぼ砂漠地帯ばかりの絵のはずなのに、ワンポイントで色彩をねじ込んでくる描写にも芸術的なアートセンスを感じさせた。
そしてなんと言ってもグロ描写である。今作のグロはポイントごとに集約されているが、かなりの痛々しさ。肉片をほじくり出すようなシーンは正に迫真。そんなバイオレンスなシーンにはタランティーノあたりにも通じる、血飛沫の系譜が連なっているように感じた。

登場人物は4人のみで展開し、非常にシンプル。ジェニファーが男3人から酷すぎる仕打ちを受ける、彼女は何とか生き残る、リベンジ!の単純明快な構図で物語は進む。それだけに序盤の胸糞具合を吹っ飛ばす後半部分の爽快感は絶大だ。男たちの痛がる演技が堂に入っており、やられ役として非常に優秀だった(笑)

主演のジェニファーに抜擢され、体当たりの演技を見せてくれたのは、モデルから転身した新進女優マチルダ・ルッツ。完璧なプロポーションで男たちを酔わせたかと思えば、戦士として頑健なアクションも披露する、八面六臂の大活躍だ。彼女の頑張りが本作を力強き復讐劇として成立させてくれていた。

バイオレンスアクションとしての美学を手に、フレンチらしいオシャレさを融合。更には強き女性像をスリラーへと還元させた、真摯な問題提起作品でもあった。

〜あとがき〜

コラリー・ファルジャは今、注目の新鋭監督。その象徴とも言える今作のインパクトはさすがでしたね。カメラワークからエレクトロニカな重低音型サウンドトラックも抜群のセンスで、シュルレアリスム絵画のような画面構成ともピッタリとフィット。予算が増えればもっと素晴らしい作品が撮れそうです。

また、男女共に超人的に強いわけではない、というリアルなパワーバランスも好印象。ストーリーの整合性も律儀に取れているため、B級映画という印象は薄く、監督の名声拡大に伴って、カルトな人気を獲得していきそうな作品ですね。
カツマ

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