かすとり体力

アップグレードのかすとり体力のレビュー・感想・評価

アップグレード(2018年製作の映画)
4.1
「映画ってこういうので良いんだよ選手権2023」優勝候補作品。

超大傑作『透明人間』のリー・ワネル監督作品につきなかなかの期待をもって観賞したが、期待値を大幅に上回る結果に。ただただ爆裂に面白かった!!

まず、あらすじを見て欲しい!
「妻と共に平穏に暮らす男性のもとに、突然謎の組織が襲来。妻の女性は殺され、自身も全身麻痺に陥る。しかしある巨大企業の科学者によって体内にAIチップを埋め込まれた彼は、麻痺を克服し、驚異的な身体能力を手に入れる。脳内でそのAIと会話し、アシストを受けながら、彼は謎の組織への復讐に身を投じていく」

どうですか笑?中二感爆発でしょ?おらワクワクすっぞ!

いやね、本作、このあら筋に書かれてあることを、150%のクオリティで描いている作品なのですよ。。
(ということで、このあら筋の時点でワクワクしない方は多分観ても響かないです。。)

その時点で、なんかこうメッセージとかテーマ性がどうこういうものではなく、上の粗筋をとにかく面白く具体化出来ている作品、即ち「神が細部に宿っている」作品と受け止めていますので、以降細かな各論を。。

まず。

本作は近未来設定の作品なんだけど、あらゆる近未来描写が過去観たことないレベルで圧倒的にリアル。

20~年後はリアルにこんな感じなのでは?と思わせるような、ちゃんと近未来感で興奮させてくれつつも、ブッ飛び過ぎてはいないという良い塩梅のラインを攻めてくる。

描かれるどのテクノロジーも、「今我々が活用しているものが、こうなってこうなったらそんな進化してそうね」と思わせてくれるような、ちょうど良い飛躍具合なのよ。

そしてその延長で、主人公の体内AIとの会話とかもすごくリアル。「超高精度Siri」と会話している感。

(危機的状況で)
主人公『どうすれば良いんだ!!』
AI『●●してください、又は、身体のコントロール権限を私に移譲してください』
主人公『分かった!権限をやる!!』
AI『承知しました。以降、実行完了までの間、こちらで身体駆動をコントロールします』
(⇒驚異的な動き)

みたいな。
よくスマホとかから指示されるこの感じ。


ほいでこのAIとの脳内会話のズレ感と身体のコントロール描写の可笑しさは最早コメディーの領域に到達している!
(徐々にバディものみたいになって来て、かなり『寄生獣』感強し)

特に最初のバトルシーンの描写、「えぇ!!そんな動きすんのかい!!笑」って爆笑してしまうと同時に、それが帰結する行為の今まで観たことないタイプのゴア加減にド肝を抜かれてしまった。
(独立したシークエンスとしてのインパクトで言うと、結構映画人生トップクラスかもしれない)

ということで、全体的には大満足なんだけど、少し悲しい誤算のようなところがあり。

本作、『透明人間』と同じように、ラスト周辺でストーリー展開に大きなひとひねりを入れてきていて、それも良く出来た展開なので賞賛されるべきことなんだろうけど、ちょっとね。

上述の「あらすじを具体化する」ところが150%のクオリティでやれちゃってるので、「や、もうひねりとかいらないから、とにかくAIの力を借りて馬鹿みたいに勧善懲悪しまくる作品にしてくれーーー!!」と思ってしまいました。
(もっと『ジョン・ウィック』的にやって欲しかった・・・)

いやしかし。これも、とにかく作品の質が高いゆえの難癖みたいなものです。

本作に出会えて良かったです。
例のシークエンスはこれからも思い出したように見直すことになると思います。
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