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ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうたのmaverickのレビュー・感想・評価

4.5
2018年のアメリカ映画。レコードショップを営む元バンドマンの父と、医者を目指すために大学へ進学する娘の交流を描く感動作。


父と娘が曲を作る過程が物語の中心となっており、全編を通して流れる音楽が感動を倍増させる。どの曲も素晴らしく、音楽ストリーミングサービスに投稿する最初の一曲が生まれる瞬間のシーンは感動で涙したほど。元バンドマンの父を演じたニック・オファーマンの演奏姿は全く違和感がないし、音楽の才能溢れる娘を演じたキアシー・クレモンズの美しい歌声は鳥肌もの。二人共、セッションによって陶酔する様は正真正銘のアーティスト。感情に合わせた自由な動きを表現する娘と、正確な演奏で娘のボーカルをサポートする父。終盤の演奏シーンは、こちらも感情が刺激されてもうぼろ泣きだった。音楽映画の名作にリスト入りで間違いない。

父と娘の家族の絆を描く物語としても優れた出来。母親を早くに亡くし、娘をひとりで育て上げた父親の話として興味深い。多感な娘の対応に苦悩する父だが、不器用ながらに溢れんばかりの愛情を感じさせる。元バンドマンで自由な生き様の父と、大学進学を控えたしっかり者の娘との関係性が微笑ましい。これもひとつの家族の形と、そう思わせる話で感動的だ。

ニック・オファーマンとキアシー・クレモンズの二人が素晴らしいのはもちろん、脇を固める実力派俳優の存在も本作の大きな魅力。『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレット、『ミート・ザ・ペアレンツ』のブライス・ダナー、『だれもがクジラを愛してる』のテッド・ダンソン、『ミスエデュケーション』のサッシャ・レインなどが、上質な演技で本作を彩る。キアシー・クレモンズとサッシャ・レインの若い世代と、ニック・オファーマン、トニ・コレットの大人の世代のそれぞれの恋愛観を描いているのも見所。それぞれに変わりゆく人生があると、そう感じさせる見応え十分な人間ドラマ。新旧実力派キャストの魅力を堪能出来る贅沢さがたまらない。


音楽は力を与えてくれる。作中の人物が音楽に救われるように、鑑賞する我々も本作から力をもらえる。大きな感動と共に、生きる力が満ちてくる感動の音楽映画。文句なしの傑作だ。
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