ぐち

ランガスタラムのぐちのネタバレレビュー・内容・結末

ランガスタラム(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

前半と後半で全然違う映画になってびっくりした。
前半は主人公とヒロインが出会って恋に落ちるまでのラブコメで、はっきり言うと苦痛なくらいイライラさせられたが、後半は政治劇+サスペンス+復讐劇になってものすごく面白く、切なくやるせなくなった。
内容は全然違うけどちょっと『スウィング・キッズ』を思わせる…
というか予告やあらすじに書いてある内容に辿り着くのに前半丸々使ってるのがすごい。
点数的には前半1.0で後半4.0、総合したら3.3になった感じ。

前半は申し訳ない!ほんっとーに無理だった!ほとんど無いことだけど、途中で劇場を出ようかと思ったくらい…
チッティの直情型で考えなしで感情の起伏が激しく他者の話を聞かない(「話を聞かない」は難聴という物理的な意味ではないんだけど、もしかしたら難聴という困難故の行動なのかも。どうせ聞こえないから聞かないみたいな)
でもまぁこう感情が起こることが、つまりは現実の障碍者への差別心に繋がってるのかもな〜と反省したりもした。
ただそれとは別に、ラーマラクシュミに対する態度がまっっじで無理!!!だった…
あのチッティとラーマラクシュミのドタバタすれ違いは微笑ましいの?
確かにラクシュミもチッティが難聴なこと知ってるのに小声で告白したから言葉が間違って伝わって、チッティは「すけべ野郎」と侮辱されたと勘違いしたんだけど、そもそもの発端は事故とはいえ水浴び中の女性を見ちゃって謝りもしなかったからじゃん。すけべ野郎って不当な侮辱じゃないよね?そんで嫌いな奴だからってラクシュミが公衆の面前で笑い者にされてる時に一緒に笑い者にしても良いの??(ラクシュミかプレジデントに小6まで学校に行ったと啖呵を切った場面。あそこ真面目に何が笑われてるのかわからん。女が生意気言ってるってこと?それとも小6なんてたいした学歴じゃないから?でもチッティは「俺たちより学があることをひけらかしてる」って言ってたよね?)
そんな関係を経てめちゃくちゃ暴言吐いてるチッティにラクシュミがキスして「あんたのことが好き!」って言われても…
この2人のすれ違いってみんなコメディとして笑って見るの?全然笑えないんですけど。

と、前半は心の底から不快だったんだけど、後半、、、後半すっごかった…こんなところから巻き返せる映画あるんです…?って感じだった。急にミステリサスペンスになるじゃん…
やっぱインド映画の虐げられてた群衆が立ち上がるシーンは格別…個人的MVPカットは鎌を持って突進するランガンマおば様……(あれに至るストーリーを鑑みると単純に盛り上がれないシーンだけど…)
主人公の難聴という設定も巧みに活かしたスリリングなストーリーと演出は見事。本当に同じ監督ですか?

私は韓国映画の復讐劇が好きなんだけど、なぜなら甘っちょろい感情抜きで完膚なきまでに復讐を遂げてくれるから…
その大好き復讐劇にランガスタラムも加わりました…
復習してスッキリ!ってならないのが本当に苦しいけど、そんな苦しさも含めて、そして本人にガッツリ死刑宣告して絶望させて殺すのも良い…
とはいえ3年…家族すら介護がしんどい、治る見込みのない寝たきりの怪我人のあらゆる世話を、この手で殺すためだけにやり遂げたチッティのあらゆる感情を含めた情念の強さは、眩暈がするほどだ…

政治闘争から始まった悲劇が、最終的に政治とは関係なく本当に下らない「娘をこんな奴の嫁にやりたくない」とかいう私怨だったというオチに持っていくのが絶望的ですごい。「そんなことで…?」というチッティの表情。
でも小さな村の限定的な政治闘争(しかもその外には理解ある政党の長がいたわけだから、本当に一見一つの村限定の問題に見える)が、カーストからなる差別意識という社会全体の問題に広がったとも取れる。
すごい脚本だな。

KGFと立て続けに見たけど、この映画でもヒロインは映画の装置でしかなかったな〜…装置というか、後半はほとんど影が薄くなってるけど…前半ラブコメ要員?
インド映画のヒロインは大体こんな感じなのか?とも思うけどバーフバリやRRRはそんなことなかったような。
そしてバーフバリやRRR、本作も含めて、インド映画は若いヒロインキャラの扱いは前時代的なのに年配の女性キャラは強く賢く強かで、敬意や畏怖が感じられるのが興味深い。
この辺は最近のフェミニズム文脈なのか、昔からインドに通底する女神信仰あたりの影響なのか、どうなんだろう🤔
ぐち

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