岡田拓朗

search/サーチの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

search/サーチ(2018年製作の映画)
4.3
search/サーチ(Searching)

娘を検索するーはじめて知る闇。
娘が行方不明。
唯一の手がかりは24億8千万人のSNSの中にある。

現代社会において、今や切りたくても切れなくなっているインターネットとSNS…もはや充実な生活を営む上での大部分を占める要素の一つとなるくらいのものになってきているのが100%すべてPC画面で成り立っている今作によって表現されている。
全く新しく斬新な形で闇に切り込み、インターネット社会の善し悪しをしっかりとスクリーン上に叩き込んでいる。

社会的要素を入れ込む展開に、映画としての新しさ、そして申し分のないほどのどんでん返しが待っているサスペンス要素も盛り込まれていて、非常に完成度の高い作品だった。

娘が行方不明になり、捜索することで見えてくる娘の本当の姿と本音。
ネット社会の悪しき部分の一つに、知られたくない人に知られないようにしながら、もやもやを発散していくことで、そこに突けこみその人の生活を蝕む人と出会ってしまうことがあると思うが、それがありのままに描かれている。
本音や本当に思っていることは、意外と近しい一個人に対してではなく、大衆に向けて発信することの方がやりやすくなっている時代になってきてるのがよくわかる。

ネット社会から見えてくる人の表と裏の顔の違いが、サスペンス的展開と相まって絶妙な相乗効果を生み、更なる映画のおもしろさと社会的メッセージ要素を引き立てる。

誰もが誰かに発信できる時代になったからこその弊害を描きつつも、それがあったからこそのよかった部分があることも逆説的に描かれていておもしろい。

父が娘を探すときに、もはやSNSなしでは何も進むことがなかっただろうし、誰とも繋がることができずに終わっていただろう。
ネット上で誰かと繋がっているからこそ聞けることや知れることがあって、そこには誰かの意見でなく、事実が隠れている。
その事実こそがキーになっていて、それは今作だとSNSがなかったら全く発見することができなかっただろう。

もちろん嫌なこと、目が伏せたくなることも多かったが、それも全て引っくるめて結局はその人で、普段の生活や会話よりもネット上の方がその人が詰まっている世の中になったんだということ、そういう時代になったんだと。

その中で、切りたくても切ることのできないインターネットやSNSとどのように向き合っていくのか、を問われている作品でもある。
SNSで自分をどれだけさらけ出すか、どれだけ自分を現実と異なる形でブランディングしていくか…この差分は今後のテーマの一つとなりそうな気がする。

そこまで仲良くないと言っていたクラスメイトが行方不明になった途端、いきなり親友として「よい子である自分」をブランディングして、いわば行方不明であることを利用して自身の価値を高めるような行動をとる。
表と裏がこれほどに違うと出ている情報だけを鵜呑みにせずにはいられない、メディアリテラシーの必要性も問われている。

SNSが発達し、誰もが好きなことを発信できるようになったことで、対峙すべき相手とは違うところで本音やもやもやが発散され、現実社会ではコミュニケーションにおいて向き合うことが必要なくなってきている感じがするし、今作もそれがきっかけとなって起こった悲劇であった。(しかもそれは本当に些細なことで)
切りたくても切れないので、大事なのはどう向き合うか。

ネタバレするとおもしろさ半減しそうなので重要な点は伏せてます。
ひとことで言うなれば、新感覚の現代型(ネット)社会派サスペンスエンターテイメント。
間違いなくフィクションなのに、かなりリアリティがある。
気持ちよく色んな人の裏の闇(闇自体は嫌だけど)が暴かれていきます。

まさかまさかのあの人が…となる後半怒涛の展開とラストに様々な感情が渦巻いて、結果「おもしろかった!」と浸れること間違いなしの作品です。

社会派要素の強い「キサラギ」、「カメラを止めるな!」みたいな感じ。
物凄い映画を観てしまった感覚。
岡田拓朗

岡田拓朗