somaddesign

わがチーム、墜落事故からの復活のsomaddesignのレビュー・感想・評価

4.5
驚きの記録映画。

::::::::::::

2016年11月28日、南米大陸選手権コパ・スダメリカーナの決勝1stレグへ向かうため、ブラジル1部リーグ・セリエAのサッカーチーム、シャペコエンセの主力選手と首脳陣らを乗せていたチャーター機が、コロンビアのメデジン郊外で墜落。監督、選手、解説者ら乗客77人中71人が命を落とすという大惨事となった。ほとんどの選手とスタッフを失い、新シーズン開幕に向けてゼロからの再出発を余儀なくされたシャペコエンセが、チーム、サポーター一丸となった奇跡の復活劇が描かれる。

::::::::::::

恥ずかしながら、たった数年前にこんな大事故があったことすら知りませんでした。

ブラジル南部サンタカタリーナ州の人口20万人の都市シャペコに本拠地を置くシャペコエンセ。1973年創設と100年を超える歴史あるチームがゴロゴロあるブラジルの中では、かなり若いチームだと思う。
2009年にはまだセリエD(4部リーグ)だったチームが、2013年にセリエA(1部リーグ)昇格し、南米大陸選手権決勝までコマを進める大躍進。ただでさえサッカーに熱い国民性にあって、オラが街のチームが急速に力をつけていく街の雰囲気を想像するに熱量高そう。
畜産で栄える比較的経済規模の大きな街とはいえ、ヨーロッパの強豪チームはもとより、南米の名門チームと比べても設備も古く、人員も足りてないのが見てとれる。
金満チームとは真逆で、地域のサポーターがクラブを支えて、時にはカンパでチームの危機を乗り越えた。まさに街が育てたチームで、チームと共に街も成長を図る途上にあったチームに突如降りかかった不運の話。

2009年にヴィッセル神戸で指揮を振るったカイオ・ジュニオールも犠牲者の一人。他にもJリーグ経験者が何人も亡くなったの知って驚いた。
日本だとあんまり報道されてない気がするんだけど、自分がテレビ見てないだけなんだろうか?


サッカー選手を乗せた飛行機事故といえば、マンチェスター・ユナイテッドの1958年の「ミュンヘンの悲劇」。乗客44人中23人が亡くなり、うち選手8名とスタッフ3名を失うものの、生き残ったマット・バスビー監督を中心にチームを再建。現在につながる名門チームの礎となった物語が有名。
しかしながら、もはや存命してるのがボビー・チャールトンくらいだし、すっかり世界的チームになって以降からしか知らないので、現在進行形に復活を期しているチームの1年の記録には思わず見てる方も熱くなる。
眼前の難題の山を前に解決を急いだ結果バラバラになっていくチームとサポーターだったり、紆余曲折を経て原点回帰していくのも感慨深い。

大変な悲劇が起きた一方で、事故から奇跡的に生存者を救ったのが、国も違えば文化も違う大勢の無名の人々の善意なのも良くて、シャペコエンセの家族的雰囲気も相待ってかサポートし合う関係性のカッコ良さが響いた。

どうせならW杯開幕に合わせて公開すれば、もっとヒットしたかもしれないのに。決勝T直前に公開ってどうなのか。とはいえ映画館で見るほどの映画かどうか判断に困る内容ではあるので、自分にしては評価が下がってしまった。


57本目
somaddesign

somaddesign