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町田くんの世界のryodanのレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
4.2
人間が愛おしくなる作品。今の世の中、「人が好き」が何ら評価の対象にはならない。見える形で何かを残さないと、学業や仕事での成果だったり、認めてもらえない。町田くんはそんな箸にも棒にもかからない子。でも町田くんに触れた人間は、今までとは違う世界に踏み込んでいく。生き辛い世の中で、生き辛い人達ばかりなのに、どうしてか生き辛い社会の中で、弾かれない様に生きようとする。町田くんは違う世界にいる。町田くんの世界では、勉強も運動も仕事もそれだけで人間を評価する世界に住んではいない。でも町田くんはヒーローではない。こちらの世界ではただの落ちこぼれ。だから世界を変えることなど出来ない。町田くんが世界を変えていくんじゃなくて、町田くんの世界に皆が踏み込んでいく。そうすると生き辛い世の中でも、生きていてもいいんじゃないかと思わせてくれる。なんだろ?皆が見ている風景と同じ風景なのに、確かに町田くんの世界がそこにあって、知らぬ間に見ている側も町田くんの世界に入り込んでしまっている。そこがこの作品のスゴイ所。日常の延長線上に違う世界がある。壮大な世界観に見えるけど、他人と交わる事ってそういう事なのかもね。
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