黒川

永遠に僕のものの黒川のネタバレレビュー・内容・結末

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

思っていたほどではなかったというのが正直な感想なのだが、それは多分本作が実話をもとにしたものだったからだろう。事実は小説よりも奇なりとよくいうし実際そうなのだが、本作は美化しすぎているきらいがあった。美化しすぎというか、実話の方を調べたらそっちのほうが胸糞悪かった。婦女暴行もしてやがった。
ちなみに僕の言う予想以上じゃないっていうのは、普段グロエグいホラー映画しか観ない人の予想であって、作中のカルリートのやったことだって一般的に言えば残酷だしクソ。

素行不良で少年院から出てきたばかりの青年カルロス(カルリート)は工業高校に転校する。そこで出会った少し派手な同級生のラモンをおちょくり喧嘩になるが、彼と打ち解けたあとは、彼とその父と一緒に泥棒することに性を出す。

簡単に盗み殺し嘘を吐き、最終的に数十人を手にかけたカルロス。異常というよりは残忍であり、美しさがその残酷さに拍車をかける…かと思っていたが、終盤まであまりそのようなエピソードは出てこない。カルロスが誰かのファムファタルなのかと思っていたが、そういうわけでもない。それに当時はまだ同性愛者への風あたりが強かった(なのでリヴェラーチェみたいなやつもいじられ気味だった)。多分そのへんがそうでもないの原因の一つでもある。若干の消化不良感。ラモンへの憧れを匂わせつつ、悪事以外で得るもの以外、彼は何も手にすることはできない。"Nothing is got he really needs 21st century schizoid man"キング・クリムゾンやんけ。夜道でハンドル操作を故意に誤り、ラモンを助手席に載せたカルロスは対向車にぶつかる。「誰かに盗られるくらいなら殺してもいいですか」。天城越えやんけ。とにかく、終盤に見えるラモンに対しての狂気がこの邦題なのだ。

カルロスが美形なのでよりセンセーショナルに見える物語であるが、これはある種のルッキズムでもある。原題は多分「天使」という意味だろう。天使が美しいと誰が知っているのだろうか。誰かを騙すためなら、悪魔のほうが美しいのではないかと僕は思う。美しい青年がほしいもののために残酷に振る舞う。これが見た目キモオタだったら最悪の殺人鬼だけで終わるよ。そしてブサイクなホモっていじられる。いや、美青年でもそれが更に魅力増してるって感じでこうやっていじられて映画化してるじゃん。しかも邦題に至ってはコレ。美しいって大変だね。
黒川

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