「息をするように人を殺す」犯罪を犯す、という言い方はあるが、この主人公のスイッチはもっと軽く入る。
この作品は、どう評価するかによってその評価する人間の嗜好や考えを晒してしまう映画だ。
まず、主人公のキャラクターに対する評価、特に妙なダンス。これはインタビューによると、まだ存命(!)のカルロス本人のクセなどを訓練したのだという。
それを知ると、ダサいとか言えなくなる。
人はこういう犯罪を犯す者は「異様」で「異常」だと思い込みがちだが、そうではない。
また、共犯者との関係はゲイなのかということ。これはペドロ・アルモドバルが制作者であるからのアレンジで、これも従来のゲイというより新しい関係(クイアが近いか)と。
実際カルロスは、強姦や強姦未遂も犯しているので、この映画はそれには触れず変えているのだが。
主人公の体型ががっしりしておらず、幼児体型なのは逆に怖かった。
だが、子供のような容姿の十代が何の激情もなく、欲望より低い水準の思いつきで犯罪を犯していくようすは、怖いというより不思議だった。
人はそこに生育歴など、理由や原因を求めがちだがわからない。それも教えてくれる映画だった。