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THE GUILTY/ギルティのKuutaのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
3.0
乗れなかった…。主人公アスガー(ヤコブ・セーダーグレン)の行動に終始モヤモヤしてしまった。

心が歪んでいるアスガーが、好き勝手な行動から泥沼にはまっていく。話が進むほど「こんなに1人で事案を背追い込んで暴走するなんてあり得ない」と感じてしまい、緊迫感が薄れていってしまった。

良かった所。序盤、些細なヒントから住所や車のナンバーを割り出す手際の良さはとてもワクワクした。私としては、会話劇の面白さはここがピーク。

犯人も、被害者も、それぞれの家も、観客の中でしか存在しない。どんな家を思い浮かべようと、どこにも正解がない。この手法は斬新だし素晴らしい。「ここはキッチン、ここは寝室…」と警官が一部屋ずつ回る声を聞く場面は、不思議と実際のホラーやサスペンスを見ているような緊張感があった。

ただ、この設定ももう少し活用できたのではないか。ただ単に台詞でストーリーにツイストをかけるだけでなく、音そのものの叙述トリック的な仕掛け(「男の声と思ってたら女だった」「車内と思ったら違った」みたいな)をもっと見たかった。

何度も劇中で指摘される通り、アスガーが人質の命を危険に晒してまで事件に首を突っ込むのが納得できない。警察とバレないように会話させてたのに、電話番号が分かるといきなり犯人に直電。なんで応援を呼ばないのか、なんでプロの捜査班に任せないのか。これで激高されて人質殺されたらお前責任取れるのかよおおと感じてしまった。

そもそもアスガーには文字通り「伝聞情報」しかない。何の物証も無いのに、状況を思い込みで決め付けてミスする。こんなの推理でもなんでも無いし、こんな警察最悪じゃないか…と暗い気持ちになってしまった(劇中アスガーのミスで辛い経験をしてしまう人物が出てくる。この部分だけでも後々提訴されてもおかしくない)

罪を作ってしまうのは自分の中の偏見、身勝手さであり、アスガーが誘拐事件を通してその事を学び、自分と向き合うようになる。そういう話なのは分かったが…。

アスガーのキャラは「人生どうにでもなれ」というような自暴自棄な側面がある。でも、「だからこの展開も仕方ないよな」とはどうしても思えなかった。人の命掛かってるんだから。瑣末な通報にイライラし、放置するのも、そういうキャラ付けなのは理解できるけど、やっぱり職業人としてどうなんだそれはと。その通報がもっと大きな犯罪の端緒になった可能性もあるのに。向こうも忙しいはずなのに、アスガーはガンガン司令室に電話するのもあまりに自己中心的だなぁと。

などなど、本筋と違う所で色々と引っ掛かってしまい、素直に楽しめなかった。終盤の女性とアスガーの会話、「もう君たちの好きにしてくれよ」とすら思ってしまった。自分には合わなかったんだろう。60点。
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