わたがし

CLIMAX クライマックスのわたがしのレビュー・感想・評価

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)
5.0
 こういう映画、本当に撮りたいなあと切実に切実に思う。観る側からしたらほんとにあんまり面白くないんだけど、撮ってて一番楽しい類の映画だと思う。今のギャスパー・ノエならどんだけ崩壊してて理屈が通ってないものを作ろうが、ちゃんと作品として世に出て(カンヌに招待されて)リアクションが返ってくることが確約されているからこその自由度があると思う。もちろんフランスっていう土地柄も。自由っていいなあ
 ダンサーが踊ってるのを延々延々うんざりするぐらい同じアングルから撮り続ける勇気に「すごいことしてるなあ」と思いながら観ていたら、それが予想の3倍ぐらいの尺で延々続いたときは宣伝文句通りほんとにトランス状態に陥りそうになったし、心の底からマジで「変な映画だ」と思った
 その後に続く地獄展開もストーリーとかシーンの積み重ねとかそういう「映画を映画たらしめるもの」を全部ダンサーの身体性にガン投げ、それをラリったカメラが追う。このラリったカメラというのもまた、よく「カメラは映画の重要な登場人物のひとりだ」とか言われるけど、ここまで登場人物じみたカメラもそうそうないってぐらいカメラワークに自我がある。そして遂に日本語字幕まで調子に乗り始めるという!!最高の演出!!
 最後の決着の付け方も好きだった。残像のようにゆっくりゆっくりと浮かびあがる結末。この映画を観る90分間の体験がまさに「生まれて生きて死ぬ」ってことなんだと思う。映画も人生もいろいろありますね!!
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