人間の感情を映像的に表現する方法はいろいろある。
セリフ、声、表情、動き。
『3-4X10月』は感情をことごとく省く。
柳 憂怜は無表情で、言葉少なく、素振りからも暴力的な仕草からも感情を感じない。行動原理がインプットされた機械のようだ。
ビートたけしは動物的だ。
衝動的に金を使い込み、殴り、ののしり、命令する。何一つ計算がない。こちらもまた、DNAにインプットされた原理に従って行動しているだけのように見える。
しかし、こんなにも感情のアウトプットの壊れた映画にも関わらず、確かな友情が描かれている。
情の発露を担当しているのは乗り物だ。
バイク、自転車、タンクローリー。
乗り物がエモーショナルに走るから、
彼らの中にたしかな情があることが分かる。
直接的に表現するよりも、豊かな情が感情表出以外から表現されている。
恐ろしく大胆な引き算と足し算の映画である。