「ニガーって言わなくても差別はできる。」
海外でしばしば起こる人種差別にまつわる事件。差別がどんなものか、警察官がどんなやり方をしているのか少しだけ知ることができます。
無実の黒人の友人が警察官に射殺されることがメインストーリーの始まりですが、映画冒頭の学校のシーンで今の差別ってこんな風に起こってるんだということがわかります。
高校のシーンでは正面切って差別をする様子は描かれていません。白人の子が自分がレイシストであると言われたことにひどく拒否反応を示すシーンがありますが、誰も差別する人間にはなりたくないのは日本と同じです。しかし、白人と黒人の間には経済的、職業的な分断があります。多くの場合貧しいのは黒人たちの方で、そこにも力関係が生まれてしまいます。「彼ら（白人）が言うとクールでも私だとギャングだ」という台詞に集約されているように、黒人は白人が期待する黒人像を演じなければなりません。しかし、何かの拍子にその力関係が目に見える形で現れてしまうと不満が爆発し暴動にまで発展してしまう。まさに今のアメリカですね。
映画では、登場人物達がそれぞれの立場から事件に関わります。黒人らしさを控えめにして賢く賢く振る舞う主人公の女の子、そのボーイフレンドである白人の男の子、主人公の友人である白人の女の子、白人の警察官、黒人の警察官、黒人たちが抱える脅威、まだ善悪の判断のつかない小さな弟など...
誰がどんな背景を抱えてどんな考えを持っていて、誰が正しく誰が間違っているのか考え続けました。デモはしてもいいのか、その中で車を壊すような破壊活動はあっていいのか、抗議活動を理由に学校を休んでいいのか、差別をする人にはどう接すればいいのか。
差別を終わらせるには政治、社会、歴史などあまりにも大きいものと対峙しなければなりません。でも声をあげることをやめたら終わりです。そんな声の一つとなるのがこの映画ですね。
