やまモン

アルキメデスの大戦のやまモンのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
3.8
【悔しいけど面白い!】

基本的に漫画原作の映画は見ないと決めている。原作とどうしても比べてしまうから。

でも、残念ながら?クソ面白いですね。

主人公である櫂直の最後の決断は正しかったのか??是非とも考えてみてほしい。

映画そのものは、出てくる俳優さんも素晴らしく、シナリオも面白い。そして、緊張感のある展開。エネルギーに溢れた良作だと思いました。  

以下は蛇足

未熟者故に、戦争ものについて述べていると、未だにアツさを捨てられないので、出来るだけ簡潔に済ませたいのですが、1つ2つ。

「数字は真実」「数字は正義」
劇中最も印象に残った言葉です。そして、個人的には100%支持したい言葉でもあります。数字そのものは時に冷酷に過ぎるほどに厳然としては真実、或いは現実を示します。故に完全に理性的なものです。数字を100%根拠として物事を選択する、ことがもしも可能であれば、無益な行為といったものの大部分はこの世から抹消出来るのではないでしょうか。
しかし、実際には理解に苦しむ物事に事欠かないのが現実世界です。何故そのようなことになるのか。それは、人間は「解釈」するからです。
例え数字が嘘をつかないとしても、都合良く解釈する者たちが、勝手に嘘を作り出している。
人間には感情や情緒が、誰しも多かれ少なかれ備わっています。解釈にそのようなものが介在するが故に、真実はねじ曲げられ、完全なものは損なわれるのではないでしょうか。
そして、感情や情緒、或いはそれに行動原理を求めることを、人は人間性であるとか人間的であるとか言って礼賛します。余りにも安易に。そして、根拠を定量的に追及する理性的な人間を、感情の無い、機械のようであると批判します。余りにも安易に。
しかし、戦艦大和を「美しい」「壮大である」と称賛した精神性の行き着く所が何処であったのか、ご存知の通りです。
人間らしさは、時として、人間世界に地獄を見せる。とても大切な教訓です。

もちろん、生命体として活動していく上で、感情や情緒が必要な場面も決して少なくはありません。しかし、少なくとも日本人は使い分けが絶望的に下手くそなのでしょう。
多くの日本人が歴史認識において情緒を統計や数字よりも優先しているように思えます。
故に、先の戦争についても、礼賛するにしろ批判するにしろ、議論が感情論にふれすぎてしまい、意味のある結論、即ち現実的な行動原則や指針を得ることが出来ないのではないでしょうか?
また、日本人が政治音痴であり、現実認識能力に劣る原因でもありそうです。

これ以上没落したく無いのであれば、大いに反省が必要ですね。