シズヲ

さすらいの青春のシズヲのレビュー・感想・評価

さすらいの青春(1966年製作の映画)
3.8
夢の旅路めいた映画。フランスの自然豊かな田舎の情景が超自然的な撮影によって描写される。鮮やかな色彩と幻想的な光源の嵐。特に序盤は過剰な光の強調とぼかしを効かせた耽美な映像で度肝を抜かれるし、前衛的すぎて最早印象派の絵画めいてる。モーヌとイヴォンヌとの出会い~屋敷でのパーティーの場面はその局地で、モーヌの視点を介していることで宛ら夢の世界に迷い込んだかのような感覚に囚われる。こういった撮り方は正直やりすぎ感があるけど、中盤に差し掛かる辺りで大人しくなる(それだけに演出過剰な三日間の冒険のシーンの神秘性が際立つ)。被写体を観察するかのように緩やかに彷徨うカメラワークも印象深い。

たった三日の出来事に始まり、一途な想いを胸に愛を追いかけた青年の物語が前述の幻想的な映像と共に綴られる。夢と現実の掛け違い、天秤に掛けられた愛と友情といった事柄の果てに苦い結末をもたらしてしまう青春の儚さ。しかし決して救われぬ話という訳ではなく、最後は愛も友情もそれなりの着地点を見出だしてくれるので溜飲は下がる。ヒロインであるイヴォンヌの淑やかな美しさは勿論印象に残るし、語り部的存在でモーヌとの友情を貫き続けるフランソワの立ち位置も良い。淡い芸術のような不思議な味わいの作品だった。
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