シズヲ

海へ行くつもりじゃなかったのシズヲのレビュー・感想・評価

3.4
またまた短編映画。「鬱屈の日々を過ごすサラリーマンが同じく鬱屈を抱える若い女の子と出会い、一緒に海へと向かう……」という粗筋はあからさまに出来すぎてて引っ掛かるが、二人が海に行ってからの雰囲気はちゃんと良いので憎めないものがある。浜辺から掘り起こした凧を揚げるシーンにはカタルシスのような幸福感があるし、要所要所の絵面も良いので何だかんだでええもんを見た気分になってしまう。

撮影の構図も良いけど、主演の女の子の可愛さがかなり絵的な魅力に貢献している。金髪やメイクの雰囲気がとても好き。聴覚障害で一切口を利けない設定は良くも悪くも彼女のイノセントさを強調させている。そしてサラリーマンと女の子が海に行ってからの一連のシーン、淡々と穏やかなムードも相まって束の間の開放感に満ちている。あれで二人の人生が変わったという訳でもないだろうけど、きっとほんの少しでも胸のつかえが下りたであろう安らぎがある。それとブーメランおじさんや路上パフォーマンス注意じいさんなど、ちょろっと出てくる脇役に妙な味があって好き。
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