ぱるみ

岬の兄妹のぱるみのネタバレレビュー・内容・結末

岬の兄妹(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

私の実家には、カーテンがなかった。子供だった時。

カーテンの代わりに、よーわからん宗教の会合で使う手作りのポスターを、夜になったら、洗濯バサミで吊るして、カーテン代わりにしてた。

お母さん、ウチはカーテンを買う余裕もなかったの?

「◯◯◯◯年、栄光の年!!」
って、手書きで、そのポスターには書かれてたよね。

私達の生活に、輝きはあったの?

テレビだって、時は平成なのに、急に白黒になる昭和の品物だった。
急に映りが暗くなるから、テレビをバンバン叩いた。調子が良い時は、明るく映えた。リモコンがないから手動でカチカチとチャンネルを変えた。

お兄ちゃんは、こんなテレビがある家は恥ずかしいから、友達を呼べないって、嘆いた。

自転車操業の家計のやりくりで、お金はないけど、美味しいお母さんが作った手料理が食べれるから、ええやないかって、なけなしのお金でビールが飲める食卓で、おとんは言った。それを聞いたおかんの顔は、呆れながら父に背を向け、キャベツを切った


ランドセルを買ってくれたのは、薬剤師のおばあちゃん、レストランに連れて行ってくれるのは優しい叔母さん。

お父さん、一家の大黒柱のくせに、虫に喰われまくった柱で、すぐにお家は倒れそう。情けねーよ破れたTシャツを着る、指先が真っ黒の貧乏なおっさん。


私が子供の頃に書いた家族の食卓の絵を、お父さんは、愛おしい、優しい眼差しで眺めた。
その眼差しをみて、この人は、家族を愛している人なんだと、確信した。

お父さんが見てない所で、ぐちゃぐちゃの食卓の絵も書いた。テーブルには、黒い虫。低所得賃金で、早朝から中古のトラックに乗り、耳が遠くなり、身体を蝕んでいた父親の境遇も知らないで、なんて酷い絵を描いたんだ。
お父さんは、毎日汗臭いけど、お風呂が好きでよく湯船の中で疲れ果てて、眠っていた
眠っている父親に、ふざけて大きな声で起こすのが面白かった


「岬の兄妹」を鑑賞して、傑作だと痛感するけど、2度目の鑑賞は無理だと思ったのは、足をびっこひく(この表現は、おそらく差別言葉)兄の姿が、爪の先を黒くしながら、家族を支えてた私の父親と重なって辛くなった


学生の時、駅構内にある喫茶店のアルバイトがきつ過ぎて、泣きながら辞めた。メモを取らずに注文を覚えるって何?ムリだぜ??

お父さんは言った

「働くってことは辛いことなのに、どうして投げた出した。わしは辛くても、働いているのに、
簡単に投げ出した。なんで辞めたんや」



会社の人間関係で、悩んで、マッチョの男性社員から自分抜きの会議を毎度されて、疎外感で逃げ出したくなった

一人暮らししてる家賃はどうすんねん。
辞めてからの国からの請求は、厳しいど。

辞めてもええけど、覚悟はせぇ

と、両親に、言われた

甘えかもしれないけれど、嘘でもいいから、気持ちが落ち着くまでお家で、ゆっくりし。ゆっくりするまで、家族が娘を守るって、言ってほしかった。嘘でも…

弱い者虐めの職場には戻りたくなかった
私の思想は、被害者意識に蝕まれてしまって、
頭を前後に振りながら、職場へ向かった
息ができません。助けてくださいと、泣いた
私にも、もちろん非があります

組織の中で、自分の感情を押し殺して生きてゆくって、なんなの
会社を辞めたって、どうにでもなるって、言ってほしかったの、会社という塊に、自分が守られてるなんて、おかしい

家賃を払わなくちゃいけないやん!
一人だから…!!誰も助けては、くれないし。
職を失って、岬の兄妹のような生活になるのが、心底恐ろしかった


愛情は、くれるけど、
カーテンを買えなかった家庭環境は、
組織から抜けることができない私を、臆病にさせたの?それとも、たくましくさせたの?どちらなの

伯父さんが重い病気になった時、お父さんは弟を救いたいが為に、

信仰する宗教を勧めようとした。

伯父さんが欲しかったのは、宗教じゃない。
覚悟たる金銭的な援助だったと思う。


宗教を嫌う伯父さんに、それを勧めるのは、父親にとっては、愛情かもしれないけれど、

伯父さんにとっては、酷い暴言だ。
絶対に、言ってはいけないこと
言わなくて良かった

 
お父さんは、声を噛み殺しながら、
仏壇の前で、数珠を合わせて泣いていたけれど、どんな想いだったの
何を祈っていたの
伯父さんは、安心と安定が欲しかった
お父さんは、甲斐性無しだ



両親を尊敬できることは、ひとつ。
他者を、僻まない


どれだけ、低所得賃金で、ギリギリの生活でも、
今日は、明日は、きっと良き日だと信じていた


「仕事を辞めたら、お前なんか缶拾いのおっさんや」

と、父親をこき使った職場のおっさんに言われたらしい。父は、人の良さを利用されて虐められていた



私は、恥ずかしながら、友達、他人を醜く僻むよ。

だから、友達と呼べる人が皆無に等しい。


両親は、狭い団地の一階に住んでいて
「パラサイト」の映画のように、計画性がないから三人目の子供の私が、産まれた


私の兄妹は、両親を守りたいと想って生きてる

貧困家庭で育ったから、堅実に。
ねーちゃんにばっかり、親の面倒頼むのは、ちゃうって、言ってる

お兄ちゃんは、柄の悪い病院で、人気のない物陰にチンピラから呼び出され、毎日シャドーボクシングを受けながら仕事してる

暴力をうけ、殴られたら相手の負けだから
怖くないらしい。脅しが終わるまで、じっと耐える。ヤンキーに絡まれることは、慣れたんだって




両親を守るため

生活を守るため

私の兄妹は、生きる


私は、いつも、比較しながら、
誰かを羨みながら、嫉妬していた

だから、インスタグラムの友達のフォローを全員
辞めた


おかん、おとんは、誰も羨んだりしない

前しか、向いていないから、希望があるから
いつか、どこかで、美しい田舎の風景がみれるから


お惣菜を買って、
年季の入ったテーブルにはサッポロ黒ラベル



愛情深い子供達が、自分達を守ってくれて




幸せだから。











(朝起きて、めちゃくちゃ恥ずかしくなって消したけど、せっかく書いたし、もったいないので再投稿。イイねとコメントくれた方、ごめんなさい🙏ちゃんと見ました!)
ぱるみ

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