このレビューはネタバレを含みます
「話せない、死んでるもん」
「死んでるのもいいね」
序盤の叙情的なシーンからいきなり心を鷲掴みにされる。
自分自身の言葉を飲み込み淡々と現実を受け入れていくクレオのせき止められていた感情が溢れ出す、終盤の海のシーンがあまりに美しい。
序盤の洗濯や清掃の水の描写、終盤の津波はもちろん、
火事を消火する水であったり
プロットポイント2にあたるであろうクレオの破水も含め水のイメージが象徴的に使われていた。
本棚だけ持って行かれ、本が残った部屋。
クレオとソフィアたちは男たちに翻弄され傷つきいくつかのものを失う。
でも本当に大切なものは、ここに残った。
はじめ壁に囲まれた四角い空を見たときクレオは鳥かごの鳥のように見えた。
しかし困難を乗り越え彼女たちは支え合い愛と自由を求めて生きていくなかで強くしなやかに成長していく。
ラスト、階段を登るクレオはキュアロン監督の記憶の中へ帰っていくようにも見えるし、まるで空に羽ばたいていくようにも見える。
監督の過去を振り返り家政婦への思いを綴る極私的な物語ながら、
普遍的な愛と自由を描いた作品でもあるのかもしれない。傑作。