KKMX

ROMA/ローマのKKMXのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.0
本作はとても美しい映画だと感じました。

映し出された世界が、清濁併せ持った上できれいに撮れているように思えました。映像が世界を肯定している印象です。それは、本作に通底している愛と感傷と贖罪を卓越した撮影技術で表現しているからではないでしょうか。

キュアロン監督にとって、本作のテーマはセンチメンタルに過ぎるのでは、と感じました。それゆえ彼は本作から色彩と劇伴を排したのでしょう。情緒を司る色と感情を愛撫する音をなくすことで、キュアロンは本作と距離を置くことができたように感じました。本作がカラーでBGMつきでしたら、甘ったるくネトっとした作品になったと思います。本作の持つ凜とした雰囲気は、モノクロとBGMナシでなければ生まれなかったでしょう。

物語は一見地味ですが、終盤はかなりエモいです。主人公クレオと一家の母親ソフィアの内面の変化はかなりパワーがあります。クレオの変容につながる海辺の長回しシーンは非常に印象に残りますし、ソフィアの決断はとても力強く胸に迫るものがありました。
特にソフィアの終盤における表情は、誰かを頼らないと決めた強さに満ちていて、爽やかだし晴れやかでした。カッコいいしイカす。彼女をとても好きになりましたね。
思い出シネマである本作において、この2人の大きな変容はガチかファンタジーかはわかりませんが、キュアロンの想いはここに集約されてました。この変化をとっておきの演出で盛り上げたいがために、本作を飛び切り美しく、ちょっと距離を置いて撮ったのでしょう。

また、クレオを傷つけるクズ男フェルミンのエピソードもなかなか味がありました。やってることは下衆そのものですが、下衆に生きざるを得ないエピソードがきっちり語られていて、観手としてちゃんと複雑な気持ちになれるのが良かったです。
貧困の中で安全もなく差別されて育つと、敵意だけが先鋭化していきます。自分が人と思われないから相手を人と思えず傷つける。現代でも普遍的に存在するアウトローのスパイラルが生々しく描かれているなぁとしみじみ思いました。このタイプが武力のコマとして政治利用されるのもあるあるです。フェルミンはクズな一生を終えていくのだろうなぁ…

意外と面白・間抜けパートもそこそこ充実してました。フェルミンのポコチン丸出し演武とか、間抜け度マックス!しかも、そこで語られていることは重要だったりするギャップがたまらないです。
武力集団の師範と思われるナゾのルチャドーラみたいなオッサンもウケました。教えているゴロツキたちにヨガのポーズっぽいことをやらせるのですが、みんなできなくて、見学していたクレオだけできるとか、バカにしたギャグですね。超好感持てます。


個人的にはたいへん好みの映画でしたが、最後に毎度おなじみの文句を。

尺が長い!冗長です。もっとコンパクトにした方が、物語が凝集してさらに力強くなったと思います。さすれば私のような集中力ゼロクラスタにもばっちりアピールできたでしょう。
この手のまったり進むガーエーは100分ですね、100分!100分以内で作り上げてほしいと切に願います。
特に序盤が極めて退屈でした。私は開始直後でウトウトし、展開がないためすぐに寝落ち。皆さんに好評の床の水洗いシーンも、私にとっちゃ眠りを誘うだけでした。だって長いんだもん。フェルミンのポコチン演武の時だけは何故か負のヴァイヴスを感じて(笑)一瞬目覚め(おかげでフェルミンの過去をキャッチできた)、それからしばらく爆睡。多分、30分以上は爆睡してたと思います。そう考えると起きてた時間はちょうど100分前後か?やはり、まったりガーエーは100分ですね!
KKMX

KKMX