KANA

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のKANAのレビュー・感想・評価

4.1

原作は子供の頃読み、映画はウィノナ・ライダー主演版を観た。
そして久々に再会した新たな『若草物語』。

はぁ…このしみじみとした情感はスパッとコンパクトに言えない。
個人的には、もはや"女の幸せは…"というテーマを凌駕した、人生のあらゆるエモーション・経験と感動がぎゅ〜〜っと詰まった作品だと感じる。
それは瞬間麻薬的なドーパミンでなく、文脈(時間の積み重ね)を経てのセロトニンが出てこそ得られる感覚。

しかも本作は、時間軸をきめ細やかに交錯させて間延びさせず、構成がとても洗練されてる。
例えばローリーの指輪や郵便受けの鍵にしても、先に登場させてから、後で忘れないうちに由来を挟む、とかすごく粋。
映像も、過去のシーンは暖色の薄明かりで温もりが溢れていて、
現在はそのままの自然光、もしくは青みの冷たさすら感じる。
そのコントラストがジョーの、"少女時代にしがみついていたい"未練みたいなものを象徴してるように思えた。
彼女のハリネズミ症候群的な側面、すごく共感できたりもするんだよね。。

「本当はローリーを愛している、もう一度プロポーズされたら次はYESと答える」とジョー本人に知らされていたお母さんが、ローリーと婚約したエイミーにハグするジョーとアイコンタクトをする一瞬のシーンが忘れられない。
こういう行間にグッとくる。

どこかで掛け違えてきて
気が付けば一つ余ったボタン

今以上をいつも欲しがるくせに
変わらない愛を求め歌う

良かった事だけ思い出して
やけに年老いた気持ちになる
とはいえ暮らしの中で 
今 動き出そうとしている
歯車のひとつにならなくてはなぁ
      
        ーー『くるみ』より

環境も、人の心も、諸行無常。
メグは結婚し
ベスは死に
エイミーはフランスへ
自分は・・
ただ、どの生き方を選んだって悩みは尽きやしない。

大衆受けするように小説の中では結婚したジョーと、実際は結婚せず自分らしく生きるジョー。
このパラレルなエンディングに、監督の作者オルコットへの敬愛を大いに感じる。



とにかくシアーシャ・ローナンがよかった。ウィノナに勝るジョー役なんてできるかな、と斜に構えてしまってたけど、ますます演技に磨きがかかってる。夢中で書くところとか、勝ち気で不器用なキャラの表現が本当に巧かった。
それこそメリル・ストリープ並みの大女優になっていきそうな予感。
フローレンス・ピューは『ミッドサマー』を観た後だったので、本作ではのびのびしててなんか安心した笑 水色のドレスがとってもよく似合ってた。
ローラ・ダーンの、一歩引いて見守る母性も素敵。

画的には、お父さんが帰ってきた日のクリスマスの団欒が温かくていちばん好き。
あと回想の海辺のシーンもきらきらノスタルジックで素敵だったし、
(ローリーがジョーにプロポーズするシーンの)丘から見渡す紅葉の美しさは感動的だった。
そして四人姉妹のわちゃわちゃしたあの光景、永久に真空パックしておきたい…
KANA

KANA