ひでやん

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のひでやんのレビュー・感想・評価

3.9
女の幸福とは何か?

南北戦争時代を生き抜く4姉妹の絆と成長を、作家志望の次女の視点から描く今作だが、そう言えば『若草物語』は一度も観た事がなかった。序盤は姉妹の視点が切り替わったり、姉妹が揃えばワチャワチャ騒いでくっついて、喧嘩したかと思えば仲直りで、慌ただしく過ぎてゆく。更に時間軸が行き来するので、てんてこ舞い。

時代が切り替わる頻度が高いため、前半は少々分かりづらかった。帰郷するジョーから始まり、時系列の回想を描いた後、終盤で冒頭に戻る構成の方が分かり易いと思ったが、瞼の裏に浮かぶ思い出としては効果的。少女時代と現在が同じシチュエーションで切り替わる演出は良かった。

まず初めに心を鷲掴みにしたのはダンス。「僕と踊らない?」「踊れない」その台詞から始まるシアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメのダンスは最高。会場の外で軽快に、優雅に、息ピッタリに踊る2人はロマンチック。暖炉でドレスを焦がしたジョーが、今度は恋で胸を焦がすんじゃないか?と思ったシーンだった。エイミーと喧嘩したジョーに対して、「怒りを制御する」という母の話も良かった。赦す=愛ですね。貧しい隣人に食事を分け与えると、富豪の隣人から食事が与えられるシーンはじんときた。

衣装、美術、音楽、風景描写など、どれも素晴らしかった。特に良かったのは色彩。少女時代を柔らかな暖色で、現在を物悲しい寒色で描いたのは効果的。姉妹それぞれが着る服の色分けも良かった。堅実な長女メグは薄紫と緑、勝気な性格で奔放な次女ジョーは赤、優しい三女ベスはピンク、ワガママでおませな四女エイミーは水色という色分けで、それぞれの性格が印象付けられた。

富より愛か、愛より夢か。何かを手にするために何かを諦める姉妹。「幸福」をテーマに描かれたそれぞれの選択を見守りつつ、ローリーが誰と結ばれるのか気になって仕方なかった。
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