ろ

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のろのレビュー・感想・評価

5.0

どんな冒険やファンタジーより、この日常が素晴らしいと信じたい。
大衆が欲する刺激的な物語よりも‘私の人生’が輝いていたように。

幸せな家庭を築くことが夢だった姉は愛する人と結ばれた。
画家として活躍したいと野心を燃やす妹はヨーロッパへ渡った。
家族のために音楽を奏でていたいと、一歩引いたところから私たちを見守っていた最愛の妹は再び病に臥せた。
そして夢を叶えたい私はニューヨークにやって来た・・・。

今の生活がずっと続けばいい。
父も母もまだ元気で、特にお金の心配もせずに暮らしていけたらいい。
だけど、友人たちはすでに社会に出て働き、嫁いでいく・・・。
それぞれの人生を歩み始める姉や妹に焦燥感を募らせるジョー。
私はこの先どうやって生きていくのだろう。どんなふうに生きていきたいだろう。
「少女時代が終わっていくわ」と呟く彼女に私自身の寂しさを重ねた。

「結婚がすべてじゃないことぐらい分かってる。だけどどうしようもなく孤独なの」

「生涯独身でいたい。何にも縛られたくない」と話すと、「そういうこと言うの、やめなさい」と母に諫められたことがある。
ジョーは「私は自由気ままな中年女になるのよ」と何度も宣言する。結婚やお金は、彼女にとっても今の私にとっても魅力的なものじゃない。だけど、寂しさから逃れたくて愛を求める気持ちも、愛するより愛されたいと願う切実な想いも、でもそれは私の本心なんかじゃないって強がって打ち消したくなる歯がゆさも、どれも身に覚えがあってギュッと苦しくなる。

凧を上げ、家族みんなで笑い合った夏の日から数年が経ち、体調のすぐれないベスと傷心のジョーは療養のため海に赴く。
もう覚悟はできてるからと微笑むベスに、もう一度あなたの死を止めてみせるわと諦めたくないジョー。
そんな姉に妹は「死は寄せては返す波のようなものなのよ。ずっと引いたままじゃないの」と言う。
風の強い、色褪せた浜辺は冷たく寂しいけれど、そこでベスのために書いたジョー自身の物語が若草物語へと繋がっていく。悲しみは悲しみのままで終わらないのだ。

真っ白な紙に文字が刻まれていく。
赤いビロード地に包まれ、’Little women’の金の型が押された一冊が彼女の手に渡る。
そこで思い描くのは、学校を設立し愛する人と暮らす本の中の自分。
結婚も自立も同じぐらい強く望んでいた彼女は、出来上がった本を抱きしめながら、二通りの幸せを噛みしめていた。



( ..)φ

エイミーが冬の氷に落ちてしまった夜、ジョーとお母さんが床に座り込んで話している。
「後悔したことを何度ノートに書いてもなくならないの。私、成長してないんだわ」
「お母さんだってそうよ、毎日怒ってる。もう40年ぐらい努力してるけどちっとも変わらないわ」

小説を売るため自分の意に反したものを書き、さらにその小説を「僕はあまり好きじゃないな」と言われてしまったジョーは、顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らす。
プライドを傷つけられたことが許せなくてカーッときて絶交を言い渡すんだけど、それがまるで自分を見ているようで笑っちゃった。
ろ