はまたに

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のはまたにのレビュー・感想・評価

5.0
グレタ・ガーウィグが闊歩するのは映画史堂々ど真ん中。前行かば傑作が列をなす。そんな念すら抱かせる。

「売れるためにあえて結末を変えてあげる」。それはジョーの台詞であり監督の本作に対する本心でもあろうが、そこには翻意を強いられた悔しさはなく、あえて自らそうしたという意図を感じさせる。
(ある地点までおそらくジョーはLGBT、少なくとも非ヘテロとして描かれていると思うんですが、どうでしょう?)

感心したのは本作が135分しかないということ。5〜6時間も割いて家族の人生を追体験したような心持ちだったのが実際は2時間強でしかなかったというのは、いかに瑞々しく場面場面が躍動していたかという証だろう。

自分はいつか「登場人物それぞれの背景を描き出しながら、それぞれの見据える視線に嘘はなく、それぞれの出す答えに非などない。そうした物語を描き出すことが群像劇ではないだろうか」とあるレビューで書いたことがあるが、これ、もうドンピシャだった。本作に抱いた「これぞまさしく」感は、ここからの10年、2020年代の映画鑑賞においてひとつの指標になるような気がする。

ちなみに、ジョーと双璧をなすキーパーソン、エイミーを演じたのが『ミッドサマー』のあの子だとは最後まで気づかず、「どっかで見たことあるな〜このクロエ・グレース・モレッツ顔」くらいにしか思わなかったので、途中で不穏な想像に気を取られてしまうことがなくって助かった(割とマジで)。
しかし、多少気ままでいられる末っ子かつ芸術の道に進んだエイミーが、その実、結婚という女性の経済問題に最もリアリスティックだったというのは考えさせられるところ。

ともあれ、美しい姉妹に華やいだ衣装、人と人とが寄り添うときの完璧な構図、シアーシャ・ローナンの表情などなど、いいとこだらけな数十年後のクラシック。本当に素晴らしかった。

そして、グレタ・ガーウィグが次に何を物語るのか(真ん中を行くか逸脱へ舵を切るか)、早くも楽しみで仕方がない。
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