MASH

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のMASHのレビュー・感想・評価

4.5
辛い現実だとしても確かにそこにあった幸せ、それをこの監督ならではの優しいタッチで描いており、淀んでいた心が洗われるようだ。そういう風に言いたい気持ちは山々なのだが、観終わると無性に辛い気持ちが押し寄せてくる。『レディ・バード』を観た時に感じたあの感情が、再びより大きな波となって襲ってきた。それは嫉妬と自己嫌悪が混じった波なのかもしれない。

喜び、悲しみ、苦しみ、辿ってきた道全てが自分を形作り、それらは捨てようと思っても捨てることのできない一つの"幸せ"なのだ。最後の若草物語の本を抱えるジョーの姿は、そう語りかけているように思える。だが、それは今の僕にとってはあまりに眩しい言葉だ。些細なことで過去も今も恨むことしかできない自分が惨めに思えてくる。比較してもしょうがない、所詮は画面の中の出来事だと自分に言い聞かせても、この映画は心から離れてくれない。僕はそう望んでいないのに

自己憐憫に浸るための言い訳にこの映画を使っているだけというのは分かっているつもりだ。ただ綺麗事を並べただけの映画ならば、その映画への批判で渦巻くこの感情を隠すことができたのだろう。だが困ったことに、この映画は文句のつけようがないほど素晴らしいのだ。俳優陣の演技も、過去と現在が交錯していく演出も、ワンシーンワンシーンの切り出し方も、そしてラストも。こういう映画には観客に自分の心の奥底に目を向けさせる力がある。その先に見たくないものしかなかったとしても。だからこうして映画の感想と関係のない自らのことを書かずにはいられなくなるのだ。今はどうしても好きにはなれないが、いつか僕にもこの映画を大切なものだと感じられる日が来るのだろうか
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