岡田拓朗

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

4.4
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(Little Women)

今日も「自分らしく」を連れて行く。

誰もが「こう生きたい」と自分の意思で生きていけるように…そんな人生に対しての人生賛歌。
どんな時代にもついて回るこうあるべき、こうあらねばならないという世間からの抑圧。
自分らしさを追求することでたどり着くそれと合わせることによってたどり着くそれには明確な違いがある。

あらゆる時代の中で語り継がれるべき、誰もが他の人とは違う人として、自分らしさを育み、それをもとに生きていくことの尊さが、価値観がそれぞれ異なる四姉妹を軸に描かれる。

女性は大人になると、経済的な安定を手に入れるために結婚することが幸せであるという価値観が根強かった時代。
その考えに自らの意思の入る余地は、今よりも全然なかったことがわかる。

結婚がよくないとかそういうことではない。
そこに本当に自分の意思があるかどうか、愛があるかどうかが大切なのだ。
それはどんな人生を歩んでいくことになっても言えること。

作家になることを夢見ているジョー(シアーシャローナン)、女優になることを夢見ているメグ(エマワトソン)、画家になることを夢見ているエイミー(フローレンスピュー)、音楽家になることを夢見ているベス(エリザスカンレン)。
そこにローリー(ティモシーシャラメ)が、絶妙な温度感でそれぞれに影響を与えていく。
四姉妹はそれぞれ異なる夢を持っていて、それぞれの人柄や価値観が相まり、それが自分らしさに繋がり、日々を生きていた。

でもそれらは成長するにつれて変わっていくこともあるし、変わっていかないこともある。
それも引っくるめて、全ては出会う人や触れるもの、経験することによって決まってくる。
全てが自分らしさと意思を育むことに繋がっていくのだ。

色んな人が描かれていくのだが、この映画は愛がベースに全てのことが成り立っていて、衝突や仲違いも含めて、自分らしさを創るきっかけの一つとして、全てが愛おしく描かれている。
あくまで全てを攻撃的に描いていないのがよかった。
慈愛に満ちた母親のもとで育ったのが本当によくわかる。

さらに結婚と愛についても多面的によく考えさせられる内容となっている。
結婚はしたくないけど、一緒にいたい誰かはいて、その人と会えなくなると寂しい感覚。
結婚はしたくないけど、ずっと一人は寂しいから、誰かと関わりながら生きていきたい感覚。

それは結婚というものが、一つの不自由の象徴となってるからでもあると思っていて、それをすることで捨てなければいけないものがあるから、なかなか踏み出せないものになっているんだと思う。
ただし、そう思えるということは、裏を返すと生き方が多様化してきているとも捉えることができるのだ。
その辺も含めて、ちゃんと現代にアップデートされてるから、今を生きる私たちが共感できたり寄り添えるようになっている。

自分に嘘をつく選択をするのではなく、あくまで自分の意思で選択し続ける人生。
それでも生活をしないといけないから、いつでもずっと同じ夢だけを追っていられるとは限らない。
ジョーの書きたいものと世の中から求められるものの違いからくる作家としての葛藤はリアルで、それから生き方を変えていくという選択も何ら不思議ではない、素晴らしい選択であったのだ。

夢を追う人生を選ぶもよし、誰かと生きる人生を選ぶもよし、途中で夢を変えるもよし。
色んな道が成長によって広がったり、狭まったりする。
ずっとそれだけじゃなく、移り変わっていったり、増えたり減ったりして、その時々において、自分らしさを軸に人生を選択していくことを肯定してくれる映画だった。

家族、愛、夢、結婚、意思。
自らの人生を考えていく上で、自分らしさを考えていく上で、色んな状況を踏まえた選択肢を与えてくれているのだ。

そしてこのように自分らしさを育んでいくそれぞれの物語(若草物語)は、このようにたくさんの人たちに求められる作品となっている。
若草物語にて、ジョーは結婚することを、小説の結末において世間受けするための帳尻合わせではなく、自分の意思でそれを選択していったという形にしたのは、大変意義のある素晴らしい改変であると感じた。

P.S.
男性はこうだとか、女性はこうだとか、そういう性別によるステレオタイプが一番厄介なんじゃないかと思った。
これは何も女性だけの物語ではない。
自分にも間違いなく感化されるものがあった。
それはこの映画が、四姉妹を主人公にしつつも、あらゆるステレオタイプを丁寧に壊してくれる作品であったから。
ジョーとローリーの名前や人柄、価値観から性別の垣根を超えた人物像として2人が描かれているように感じた。
人は一人一人違うのだから、そんな単純にわけることができないはずだ。
岡田拓朗

岡田拓朗