akihiko810

37セカンズのakihiko810のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.0
生後37秒間息をせず、脳性麻痺の障害を抱え、車椅子での生活を送っている女性のお話。

生まれた時に37秒息をしていなかったことで、身体に障害を抱えてしまったユマ(佳山明)は、親友の漫画家のゴーストライターとして、ひっそりと社会に存在している。
そんな彼女と共に暮らす過保護な母(神野三鈴)は、ユマの世話をすることが唯一の生きがい。
毎日が息苦しく感じ始めたある日。独り立ちをしたいと思う一心で、自作の漫画を出版社に持ち込むが、女性編集長(板谷由夏)に「セックスしたことない人に、エロマンガは描けない」と一蹴されてしまう。
ユマは生まれ変わるべく新たな旅立ちを決意する。

基本的には「いい人」しか出てこないので、胸糞になることなく、安心して主人公のユマの成長を見守ることになる作品。「こういうのでいいんだよ、こういう優しいので。」と思いながら見た。

監督はこれが長編デビュー作だそうで、ユマが歓楽街をいく場面などは、いくら「とっぽい雰囲気」を出すためといっても嘘くさすぎる、といったきらいも見え隠れしたが、他は無理なく演出を進めていったと思う。
ユマ役の人(実際に先天性脳性麻痺を持つ)の演技は素人くさいが、その分、「奥手で前に出れない」感じが出ていてリアルだった。
物語後半はロードムービーになるが、そこで行くタイの情景をうまく取り入れていると思った。家出のくだりなど幾分唐突感があったが。

ユマだけでなくユマの母など、「不完全な人々」が、自分の不完全さを受け入れるような優しい映画だった。
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