シャトニーニ

グリーンブックのシャトニーニのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.7
身分も性格も違う二人が、60年代のアメリカ南部をキャデラックで駆け抜けるロードムービー。

まだ公民権運動前の、差別が続く南部では白人とカラードの生活は分けられ、当たり前のようにアフリカ系黒人がリンチされていたのです。

その辺は「それでも夜はあける」「夜の大捜査線」や「ミシシッピーバーニング」が詳しいので割愛しますが、有名なアフリカ系アーティストにもその被害者や遺族がいたのは事実で、ビリーホリデイも実父を差別によって失ったとか。

そんな恐ろしいアメリカの暗黒領域に突入するピアニストのドクと雇われ運転手のトニーは同じNY出身でも対照的。
ドクは神童としてアフリカ系で初のロシアへ音楽留学してクラシックを学び、プロのピアニストとしてカーネギーホールに住むほどの文化人。いっぽうトニーはイタリア系移民で妻子や4親等くらいの家族全員とアパートに住み職を転々とするゴロツキ。教養や環境、主義も違う二人が旅に出るのだから先が読めない

この時代、本来なら白人が上層階級、黒人が労働者が当たり前のはずですが、珍しく立場が逆なので斬新。といってもイタリア系の扱いが当時はそこまで高くないんだなとも思えます、裏社会やマフィア以外は。

当時だれもが熱狂したリトルリチャードすら知らない上流階級のドクと、クラシックの素養も文才もないトニー。「日本人なら出っ歯で眼鏡」のような、そんなステレオタイプイメージを押し付けられた側の反逆ムービーといった感。片方は腕力と度胸、片方は知性と優しさで、互いをフォローし合うのがいいですね。題のグリーンブックはちょいと薄味な気もしますがご愛嬌。

全体的には古き良きアメリカの人情が描かれ、ファレリー兄弟っぽいなぁと関心。障害者や動物がひどい目に遭うコメディでもないので、みんな安心して見られます。時期がクリスマス前というのも憎いね。。。。どっちかというとクリスマス映画になりそうな勢いでした。

これ見る前に映画の予習はいろいろしたかった、とりあえずナットキングコールは聞いておいたほうがいいかもしれません。そして鑑賞後はケンタッキー買いましょうよ、バーレルで。骨はポイーで(拾いなさい)

個人的に60年代アメリカを再現した映画が好きで最近は「ジャージーボーイズ」「シェイプオブウォーター」がお気に入りでしたがこれもそれにランクインしました。
トニー演じるのはヴィゴ・モーテンセン。ぶくぶくに太ったイタリア系大食漢の運転手兼ボディガードなんですけど、指輪物語ではアラゴルン(!)の人。目つき以外の変貌が凄いので、誰か良くわからなかった

マイナス3点は、「これファレリー監督っぽくない」点。メリーやクギ付けとかの尖ったテンポが持ち味なのに、大衆向け感動ドラマにしちゃった感じが惜しすぎる。最近だと「最強のふたり」がアンビリバボーっぽいと言われたあの感じ。笑って泣けた!