回想シーンでご飯3杯いける

いちごの唄の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

いちごの唄(2019年製作の映画)
3.0
田舎町の中学校で同級生だったコウタとあーちゃんが、数年後の七夕の日に、東京の高円寺で再開する。中学校時代と変わらずマイペースで明るいコウタに対して、どこか陰りのあるあーちゃん。久々の再会で意気投合した2人は、その後も毎年七夕の日に、同じラーメン屋で会うようになる。

銀杏BOYZの歌詞を原作とする作品で、上京した若者の孤独や成長を描きつつ、独特のユーモアや疾走感を感じさせる脚本が個性的だ。銀杏の曲も多数使用される他、ボーカルの峯田和伸がラーメン屋の店主役で出演しているのも面白い。

キャストも、ロックミュージシャンの父を持つ石橋静河を筆頭に、みうらじゅん、田口トモロヲ、宮藤官九郎、曽我部恵一、、、とロック人脈の出演が多い他、岸井ゆきののパンク少女姿が拝める等、銀杏BOYZが好きな人にとっては楽しめる要素が満載ではないだろうか。

一方で、その和気あいあいとした雰囲気が、映画としての詰めの甘さに繋がっているようにも感じる。いつの時代の設定なのか良く分からない、年に1回の再会という現実味の無さ、回想シーンとして登場する中学時代から恐らくは10年も経っていないであろう現代パート故に、成長の物語として今ひとつ見応えが無い等。

同じくロック・ミュージシャンである大槻ケンヂの半自伝的小説の名著「グミ・チョコレート・パイン」が、映画化に際して30代の疲れた中年になった主人公から高校時代を回想する形で再編された時のような、閃きのある演出が欲しかった。