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峠 最後のサムライのminadukiのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
3.0
慶喜大政奉還から始まる
室内に差し込む斜光のみでつくられた絵の美しさ、陰影のリアリティ、人物の影は長く畳に伸びて映し出される
そうだよ電灯のない時代の話なんだよ、天井からの光はないんだよねと、一気に気分が幕末へと持っていかれた 導入見事!

物語は主人、盟友、部下、領民、妻、両親そして交渉相手(敵)と賊軍の将である継之助のやりとりを通じて、勝ち負けよりも、損得よりも、効率よりももっと大切なものがある 侍とはそれに殉じるものたちのことだと教えてくれる

滅びに向かう男の生き様は美しく、哀しい。
だがこの物語は死に急ぐことを説いてはいない
肉体はいずれは滅びるものであるから、夢と理想を後世にを残すために、死すべき時を逸してはならない、というテーマは十分に伝わった

しかし残念だったのは、長岡城奪還の後、継之助が負傷してから以降の残り3分の1が、まるで息切れしたかのように急に推進力を失ってしまったこと
それは歴史上の行方を私たちが既に知っているから、ということだけが原因ではないと思う
脚本段階でなにか打つ手はなかっただろうかという思いで席を立った
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