まりぃくりすてぃ

ジョーカーのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
“プロ中のプロ”と呼べるカメラワーク(特にピントいじりが心地よい)とアーサー役らの力演との協同に、乱れなし。劇伴もマズくない。ハーモナイズされた映画の中でなら、こんなにも殺人がまるで美しい。

ふつう私たちはシネコンに、ドキドキワクワク(すなわち、非日常)&スッキリを味わうために行く。日本人には「ピエロ」「銃所持」は最初から非日常だが、一般的アメリカ人にはそれらは日常風景であって「ピエロが発砲」からが非日常への扉開きだ。
で、映画世界のフローチャートはこうだったりする。[日常]→ [非日常]→[過剰](非日常性を持続させるため・飽きさせないための)→[結末]
本作は、「過剰」の用意が巧みなほう。殺しのカウントアップやピエロの増殖。優等生なアメリカ映画を観た、という充足感が単純にある。

しかし、全体を通して「新味」はない。反富裕層デモのリーダーを登場させてノンポリプロットを思想性へと少ぉしだけ引き戻すなり、アパート隣人女性ソフィーとの “必ずしも一般的じゃない” 関係性を後半に向けて重厚にしていくなりの、もう一工夫が欲しかった気も。(すべての殺しを妙にすんなり為す)主人公の心の痛みや病気を他人顔で見れちゃう余裕が私にはあった。1970年代後半頃に作られていれば歴史的名作になったかな。

黒人女性(ソフィーとか、福祉相談員とか)に美しい顔立ちなのが何人もいたのが印象的だった。