「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。
しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。
『バットマン』の悪役ジョーカーの誕生までを描いた作品。
一介の市民としての存在でもあり得た人物が、身に降りかかる困難を経るうちにジョーカーという怪物へと変貌を遂げる物語。
ゴッサムシティという架空の世界を借りて、格差社会を描いています。
ヴェネチア国際映画祭・金獅子賞受賞作。
これはもの凄い怪作。
そして主演のホアキン・フェニックスもヒース・レジャーに並ぶほどの怪演。
なるほど、なるほど。
ジョーカーはこうして誕生するわけですね。
バットマンになる少年との最初の邂逅なども描かれ、ファンにはたまらない内容です。
しかしいかんせん、どうにもあの記憶にあるジョーカーとは繋がりにくかった。
ドラえもんが昔はエヴァンゲリオンでしたと言われてるような感じ、である。
勿論、バットマンには元来ダークな部分があるが、この映画に関してはこれ単体で評価したほうが楽しめる程度の落差はあった。
それはともかく、不条理な世の中でのアーサー(ジョーカー)の悲哀がとてつもなく心に刺さる。
彼の人生は悲劇から喜劇に変わったのか。
いや、そんなことは主観でどうにでもなる、と彼はジョーカーとして生きることを決めたのだ。
そんなジョーカーを美しいとさえ思ってしまうのは危険なことかもしれない。
だが、そこには悪の美学があるのは事実だろう。
とても見応えがある映画だった。
内容考えるとテロ煽るみたいでアカデミー賞は確かに無理だなと思ったけど。
正直、飲み込まれないか心配だった。
負は周りを飲み込む力が強いから、富裕層は少数派だとしても貧困に苦しむ人達の生活の底上げに尽力するべきなのかもしれない。
自分のことで精一杯だとしても、みんなが生きやすい世界になることはやっぱりいいことだよね。
ほんと今の時代、世界を改めて見まわして、笑えないし。
そして結局、どこから現実で、どこまで妄想なのか?
観客を翻弄する感じがジョーカーらしくて良い。
ジョーカーがチャップリンを優しい笑顔で観てるのが凄い印象的だった。
ホアキンさん納得の主演男優賞でした。
良い映画というのは湧き上がる感情がなんであれ、余韻の波が数時間は続くものです。
この映画も内容については好き嫌いあるでしょうけど、その波が長く続くという意味で、名作なのだと思います。