しんご

カプリコン・1のしんごのレビュー・感想・評価

カプリコン・1(1977年製作の映画)
3.5
「ファースト・マン」が話題になっている最近ですが、その昔「アポロ陰謀説」が世間を賑わせました。アポロ11号は本当は月になんか行っていなくて、月面着陸の様子は故スタンリー・キューブリック監督に依頼してスタジオで製作された、という類いの都市伝説です。

本作はそんな都市伝説をサスペンス・アクションに仕上げた映画。人類初の有人火星探査の準備を進めロケット打ち上げ寸前の段階で拉致された3人の宇宙飛行士たち。責任者のケラウェイ博士曰く、探査器の設備に重大な欠陥が見つかり本計画は不可能になったのこと。ただそんなことが判明するとアメリカ合衆国の沽券に関わるし、冷戦下で軍需予算も必要な中に宇宙開発の予算が削減されるのを防止すべく「火星に行ったようにウソをつく」ことを3人の飛行士は強制されるのだが...。

SFぽいタイトルとは異なり、政治を絡めた娯楽性は今見ても面白い。火星ぽい赤土を配したスタジオに「着陸」した3人の宇宙飛行士をバックに大統領の祝辞が述べられるシーンのアイロニカルで寒々しい演出が渋い。冷戦下のアメリカではこんなことが本当に行われていそうだし、時代を感じさせるね。ちなみに、当初は本作に協力的だったNASAが試写会で具体的な内容を知ったやすぐに一切の協力を拒んだというエピソードも興味深い笑。

ただ、後半1時間をブルベイカー飛行士の逃走劇に割きすぎた結果ちょっと中弛みした印象。農薬散布会社の社長役のテリー・サバラスはアク強すぎて面白かったけど、ラストもあれで事件が本当に解決したといえるのか多少疑問が残る。

とまぁ、純粋な娯楽で観てくださいという製作陣のメッセージなのかな笑。余談ですが、ブルベイカーを演じたジェームズ・ブローリンは「ノーカントリー」(07)で主役を演じたジョシュ・ブローリンのお父さん。やっぱりよく似てますね。
しんご

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