ENSAN

長いお別れのENSANのレビュー・感想・評価

長いお別れ(2019年製作の映画)
3.8
認知症は長いお別れの始まりなのか。

二人姉妹を持つ父親がある日から少しずつ違和感を覚え始めた…認知症だった。
少しずつ少しずつ色々な事が遠ざかっていく、家族の事や友人の事や自分の事も段々と思い出が遠ざかっていく。

『忘れる』という高齢になるとほとんどの者が避けては通れない出来事。

…これが本当にツラい。

(アレだよ、アレ…アレって何だっけ?アレじゃないか、アレだ…えーっと、アレ?)みたいな。

忘れていく事もあればふいに思い出す事もあって、劇中の電車内での夫婦のやり取りがとても素敵。
言葉もほとんどわからなくても誰が娘か奥さんかわからなくても『あの日の三人』に傘を持って行くお父さんが本当に素敵。



うちの祖母は十数年前から痴呆症になりました、今は言葉もわからなくて食事も口からできません。
痴呆症なり始めの頃、自分がおかしくなってしまったと思った時の祖母が一番辛かった。
「私はバカになってしまったんじゃろうか…?」と何度も口にして泣いていた。
みんなの名前も顔も多分全部わからなくなって、でも時々声をかけた時の反応がドンピシャだったり満面の笑みが大爆発したり…嗚呼、たまらなく愛おしい。

今がちょうど長いお別れ。
ENSAN

ENSAN