ずけし67

悪魔はいつもそこにのずけし67のレビュー・感想・評価

悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)
4.2
「ロクでもないヤツが多い」
劇中の台詞のとおり " 悪魔はいつもそこに " と思わされる人間社会。

暴力と欲望にまみれた人間というロクでもない生き物が断ち切ることのできない負の連鎖をまざまざと見せつけられる、そんな終始どんより暗く重い作品でした。




舞台はアメリカ、第二次世界大戦からベトナム戦争の時代のウエストバージニア州。

幼いころに父母(ビル・スカルスガルド、ヘイリー・ベネット)を相次いで亡くしたアーヴィン(トム・ホランド)は、祖母の元で義妹と共に育てられる。

亡き父にまつわるトラウマを抱えながらも愛する祖母や義妹を守るべく強く生きるアーヴィンだったが、彼を取り巻く、

世俗の欲にまみれたゲス牧師
(ロバート・パティンソン)、

クソな猟奇殺人鬼カップル
(ジェイソン・クラーク、ライリー・キーオ)、

腐敗したクズ保安官
(セバスチャン ・スタン)、

らの存在によって、否応なしに暴力の連鎖へと引きずり込まれていく。。





まず豪華なキャストの面々の演技がことごとく良き。

トム・ホランドはスパイダーマンのイメージを根っこから吹き飛ばし、幸の薄い、どんより暗い役柄を見事に演じていて、ピーター・パーカーより本作のような影のあるキャラのほうがマッチしているとすら思えたっぽい。

ビル・スカルスガルドは『IT』のペニーワイズのイカれキャラのイメージが強いけど、これまた影のある父親役を上手く演じておりました。

ロバート・パティンソンは『TENET』のナイスガイっぷりから一転、卑劣なゲス牧師でマジクズ野郎になってるし、ウィンターソルジャーだったはずのセバスチャン・スタンはお腹デップリのオッサンと化していて、この人 本当にバッキーか?ってくらいデブったクズ保安官になっており、お二人ともゲスでクズな役柄を憎らしいまでに好演しておりました。

そして忘れちゃいけない僕のヘイリー・ベネたん、てか、え?ベネたんは?ベネたん何処?と不甲斐なくもパッと見分からなかったというね。
ベネたん、本当どーしちゃったの?ってくらい横綱とまでは言わないけれど関脇か大関レベルに増量しており、アメリカによくいるカップクの良いおばちゃんと化していたのはちょっとショックでした。
でもこれって役作り?こないだ見た『Swallow』のほうが本作よか新しいはずだけど、土俵入りするほどのインパクトはなかったと思われ。
それでも演技は昔のアメリカの田舎町に普通にいそうなホンワカ優しい母親役をバッチリ演じていて良かったです。


さて、タイトルの " 悪魔 " とは罪深く邪悪な人間や社会のことを言っていると思われ、いわゆるホラー映画的な " 悪魔 " や怖さを期待すると肩透かしを喰らうと思います。

一方で、アーヴィンのように善人として真っ当な人生を生きようとしても、身の回りに巣食い、絡みついてくる " 悪魔 " の存在によって、暴力が次の暴力を生むという負の連鎖が絶たれることなく受け継がれてしまう様は何とも虚しく、その連鎖の先に一体どんな展開が待っているのか、果たして救いはあるのか、そんな先行きの見えない暗い展開に終始心の奥がザワザワする、そういった意味で " 悪魔 " の存在を感じる作品でありました。


NETFLIXオリジナル作品にしては珍しく面白かったです☆
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