柔らかな色彩のジャケ写に惹かれて、1人で鑑賞。
80年代のサイゴンを舞台にしたベトナムの音楽映画。
題名の「ソン・ラン」というのは、
ベトナムの伝統的な楽器のこと。
あらすじや"ボーイ ミーツ ボーイ"という言葉をみて、LGBTQ映画かと思ったけど、そうじゃなかった。
誤解を招く書き方しなきゃいいのに。
直線的な表現はないのでプラトニック。
どちらかといえば、友情に近い。
そっち系が苦手な方でも普通に観れるけど、ベトナム音楽やベトナム語の雰囲気が苦手な人には合わないかも。
孤独な男同士の、生き方や人生を変える3日間の刹那的な出会いを描く。
高利貸しの取り立て屋のユンは、大衆歌舞劇「カイルオン」の劇場で、団長に返済を迫る。
そこで止めに入った花形スターのリン・フンと出会う…というお話。
湿気を帯びたベトナムの空気。
昼の街の喧騒と夜の静寂。
光と影。
グレーやセピア色から、
色褪せたトーンの
グリーン、オレンジ、紫、ブルー
など柔らかな色彩がノスタルジック。
陰影を上手く表現していて、薄暗い部屋に、黄金色の朝日が優しく射し込むシーンが印象的。
独特の空気感がすごく好みだった。
暴力を使って取り立てるチンピラのようなユンだが、この仕事をしているのは悲しい生い立ちのせい。
家では鉢植えに水をやったり、怪我したリン・フンにしょうが湯を作ったり。
語らなくても本当は優しい性格なんだな。
はじめは反発していた2人が、ファミコンみたいなTVゲームに子供みたいに夢中になり、打ち解けていく感じがいい。
リン・フンが歌い、ユンがソン・ランを演奏するセッションも素敵。
正反対の人に出会って、自分の人生見つめ直すことってあるよね。
リン・フンのユンへの想いは、彼が演じる「カイルオン」の物語になぞって表現される演出が素晴らしい。
クールで言葉や感情表現しないユンが、屋上の看板の横で号泣するシーンが印象的だった。
過去を精算してソン・ランの楽器を抱え、新しいスタートを切ろうとしたユン。
それなのに…
泣いた。。。。
泣いたよ。。。。
辛かった。。。。。
繊細な揺れ動く心情を、美しい映像で描いた良作です。