Kuni

ソン・ランの響きのKuniのレビュー・感想・評価

ソン・ランの響き(2018年製作の映画)
4.0
柔らかな色彩のジャケ写に惹かれて、1人で鑑賞。


80年代のサイゴンを舞台にしたベトナムの音楽映画。
題名の「ソン・ラン」というのは、
ベトナムの伝統的な楽器のこと。


あらすじや"ボーイ ミーツ ボーイ"という言葉をみて、LGBTQ映画かと思ったけど、そうじゃなかった。
誤解を招く書き方しなきゃいいのに。


直線的な表現はないのでプラトニック。
どちらかといえば、友情に近い。
そっち系が苦手な方でも普通に観れるけど、ベトナム音楽やベトナム語の雰囲気が苦手な人には合わないかも。


孤独な男同士の、生き方や人生を変える3日間の刹那的な出会いを描く。


高利貸しの取り立て屋のユンは、大衆歌舞劇「カイルオン」の劇場で、団長に返済を迫る。
そこで止めに入った花形スターのリン・フンと出会う…というお話。


湿気を帯びたベトナムの空気。
昼の街の喧騒と夜の静寂。
光と影。
グレーやセピア色から、
色褪せたトーンの
グリーン、オレンジ、紫、ブルー
など柔らかな色彩がノスタルジック。


陰影を上手く表現していて、薄暗い部屋に、黄金色の朝日が優しく射し込むシーンが印象的。


独特の空気感がすごく好みだった。


暴力を使って取り立てるチンピラのようなユンだが、この仕事をしているのは悲しい生い立ちのせい。


家では鉢植えに水をやったり、怪我したリン・フンにしょうが湯を作ったり。
語らなくても本当は優しい性格なんだな。


はじめは反発していた2人が、ファミコンみたいなTVゲームに子供みたいに夢中になり、打ち解けていく感じがいい。


リン・フンが歌い、ユンがソン・ランを演奏するセッションも素敵。


正反対の人に出会って、自分の人生見つめ直すことってあるよね。


リン・フンのユンへの想いは、彼が演じる「カイルオン」の物語になぞって表現される演出が素晴らしい。


クールで言葉や感情表現しないユンが、屋上の看板の横で号泣するシーンが印象的だった。


過去を精算してソン・ランの楽器を抱え、新しいスタートを切ろうとしたユン。


それなのに…


泣いた。。。。
泣いたよ。。。。
辛かった。。。。。


繊細な揺れ動く心情を、美しい映像で描いた良作です。
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