カツマ

サマー・オブ・84のカツマのレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
3.8
永遠のように長い夏休み。それはやり過ぎた自由研究、副作用を起こしてしまう魅惑的なドラッグ。好奇心に誘われる、厨二病スレスレの田舎町の冒険、それは次第に推理小説の中からその手を伸ばし、少年たちの細い首を締め付ける。ひと夏の思い出は妄想の壁を突き抜けるほどヒタヒタと忍び寄り、忘れられないほどに思春期の痛みを刻んでいった。

昨今、『ストレンジャーシングス』や『IT』といった少年少女のグループによるジュブナイル型の青春作品が人気を博しているが、今作はその系譜に連なりながらも、更にカルト臭を強烈に強めた作品となっている。それだけに低予算ならではのミニマルさと、世界観の狭さが魅力的であり、本当に起こってしまいそうなほどどこにでも転がっていそうなスリラーとも言える。隣人は連続殺人犯かもしれない?かどうかは分からないが、隣人と同じくらい近くに恐怖という感情はそっと寄り添っていた。

〜あらすじ〜

1984年、夏。世間のニュースは連続殺人事件で持ちきり。犯人は未だに見つからないままであった。
15歳の少年デイビーはSF映画や推理小説が好きな妄想しがちなお年頃。もちろん連続殺人事件のニュースにも興味深々で、犯人の正体を夢想するように推理することをやめられなかった。
そんなある日、デイビーは新聞配達の道すがら、警官のマッキーから頼まれて彼の家の地下室に家具を運びこむのを手伝った。そこでデイビーは見てしまう。地下室に自分とマッキー以外の誰かがいることを。
マッキーこそが連続殺人事件の犯人だと目星を付けたデイビーは、近所に住むウッディ、イーツ、ファラディに声をかけ、いつもの仲良し4人組で殺人の証拠探しに奔走するのだが・・。

〜見どころと感想〜

少年少女の青すぎる青春映画だと思ったら、蓋を開ければこれは完全なるスリラーだった。デイビーのアイドルである少女ニッキーは事件にあまり絡んでこないため、ドラえもんやIT的な布陣とはやや異なってくる。その分、男4人で秘密基地をゴソゴソとまさぐっているかのような童貞感がかなり強く、青臭さという点ではジュブナイル映画なのは間違いなかった。

キャストは一人も他の作品では目撃したことがなく、強烈すぎるインディーズ映画の質感を散逸させてくる。監督はフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン・カール・ウィッセルの連名で、『ターボキッド』というカルト作で長編デビューを飾った新鋭。もう今作を見るだけでも彼らのオタク度の高さは間違いないため、今後の作品で地下シーンから浮上してくる姿を見ることができるかもしれない。

1984年といえば、ちょうど『スタンド・バイ・ミー』だったりアメリカのジュブナイル映画が注目を集め始めた時代。そのレトロな魅力へフォーカスしつつ、憧憬と畏敬の念を込めて送る、監督たちの偏屈な愛が炸裂した作品だったのかなと思いましたね。

〜あとがき〜

非常にシンプルなジュブナイル映画ですが、とてもカルト臭が強い作品です。終わり方といい、青春時代の爽やかさよりもほろ苦さに焦点を当てた作りになっており、そのあたりは前述した『スタンド・バイ・ミー』の鑑賞後のような懐かしさを感じさせてくれます。

こういったオタク度の高い作品を初期に撮った監督はその後大成しやすい傾向があるため、監督には要注目でしょうね。妄想は妄想のままの方がいい。妄想が恐怖に変わってしまったら、もうそれはトラウマと呼ぶべき怪物に変わってしまっているのだから。
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