モノヒロ

蜜蜂と遠雷のモノヒロのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.4
原作は読みたいと思いながらなかなか手が出ない状態だったものの、映画公開が決まり、主演が松岡茉優さんと知り、読まなければ!観なければ!
一気に読破しました。
原作最高。
期待値爆上がり。

なるべく。
映画と原作は分けて観賞しようと心がけてはいるのですが……。
やっぱ原作は後で読むべきだったかも。

映像化としてはこれ以上ないほど素晴らしいと思います。最初の雨の中を駆ける馬の幻想的なシーンから始まり、そこからの栄伝亜夜の鏡越しの憂いを帯びた表情。からの陰口を浴びながら控え室まで歩く彼女を後ろからワンカットで(だったよね?)。そして早速、亜夜の演奏聴けるのかぁ!?でタイトルドン!
上がりました。
他にも、亜夜の心が迷っていたり、揺れ動いてる用なシーンは映像が揺らいでいる演出だったり、ピアノの蓋(でいいのか?)に幼い頃の亜夜と母が楽しそうに演奏してる画が映し出される所であったり。演奏シーンは言わずもがな。原作の圧倒的活字表現を映画で魅せたる!という気概を感じました。
役者さん達も素晴らしいです。
特に松岡さんと新人の鈴鹿さん。
鈴鹿さんは風間塵というつかみどころのない天才を体現してました。ただの風間塵でした。松岡さんはやっぱ顔の演技が凄い。一番はラストの演奏前。「あ。こいつ、変わった」と誰もが思うあの顔。
主要キャストの皆さんは演奏シーンも違和感全くなくて、素晴らしかったです。
「春と修羅」のカデンツァも、原作で読んでいたイメージにとても近くて、「あーこんな曲だったわ」と思わせてくれたりして、作曲にも気合いが入ってるのが伝わります。

ただいかんせん、個人的に原作のあのシーンを映像で観たい!という欲求が強すぎまして、結構ガッカリした所も多々ありまして。


ここから映画&原作のネタバレ。


原作では、栄伝亜夜はあんなギリギリまで苦悩しないし、マサルも師匠にダメ出しなんかされません。風間塵は、一次審査の段階では、映画の描写以上に怒り狂う審査員もいたり、とにかく異端であることをこれでもかと描いてたように思います。
僕が個人的に観たかったのは、圧倒的天才達の話なんです。亜夜があんな悩んでる所は観たくなかったし、マサルは完璧超人でいてほしかったし、風間塵に対しての審査員側の怒りや困惑、期待の描写がもっと観たかった。
なので、彼女らを追い込む最終審査の指揮者のキャラクター変更も、展開作りの為にしか思えず、やめてほしかった。
そして一番ガッカリしたのは明石。僕のような凡人はどうしたって明石に感情移入してしまいます。原作では、彼だけ、天才達と“ほぼ”絡まずに話が進みます。“ほぼ”。これ重要。
後半で全く接点のなかった明石と亜夜が邂逅する場面があり、その描写に僕はとても深く感動しました。
なので、一次審査終了時点で、明石と亜夜が会話するシーンを観て、「あ、あのシーンが観られない……」と、結構ガックリきてしまいました。

そんなこんなで、素敵な映画であることは間違いないと思いますが、個人的視点からだと、どうしても不満が残る作品でした。
ありがとうございました。
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