しちれゆ

蜜蜂と遠雷のしちれゆのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.7
目にも見えず触れることも出来ない音楽、一瞬のうちに現れては消えていく「音」の魔法が永遠を作り出す不思議。その奇跡に魅了されて一生を賭けた3人の若者。そして持たざる者である自分を静かに受け入れて生活者としての音楽を追い求める男。音楽の神様の慈愛と冷酷を受け入れてなおそこに生きることを選んだ青春。音楽とは人間が焦がれてやまない幻なのだろうか。「「参りました」を通り越し「やってくれました」の一言」と原作者恩田陸氏をして言わしめた見応えのある作品、エンタメとしても面白い。
でも。
「世界に祝福されている」ということについて。
「世界に祝福されている」と思うのは中にいる人間。彼らの言う世界とは自分達が線引きした世界であり、その外側には内側よりも沢山の人間がいる。音楽とは無縁に生きる人々も。音楽を糧として生きるのはやはり一握りの人間にだけ与えられた至福である。
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