しんご

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のしんごのレビュー・感想・評価

3.8
「Looper」(12)、「スターウォーズ 最後のジェダイ」(17)でいずれも攻めたプロットのオリジナル脚本を放つライアン・ジョンソン監督が次に仕掛けるは、クリスティを下敷きにした様な謎解きモノ。

ミステリーとしては二段構成のストーリー。開始1時間で事件の全貌が殆ど観客に提示されているけども何かがしっくり来ない。残りの時間でその違和感を解消する展開はミステリーとしては王道中の王道だけれども、古臭さを感じさせないお洒落さは監督のストーリーテリングのテンポと脚本術の妙に依るところが大きいと思う。

ブラン役のダニエル・クレイグ以外に色んな人物の「複眼視点」が挟み込まれる
のが面白い。よく見たら会話にかなり細かい伏線が張り巡らされているんだよね。与太話かと思いきや重要な発言であったり、重要かと思いきや案外そうでもなかったりという意図的なギミックに翻弄される。あと、とにかく要所要所のさりげ無く散らされた笑いがズルい。シリアスに寄せなきゃいけないシーンで挿入されるユーモアはまさに「緊張と緩和」のお手本ともいうべきで、凄惨な事件なのに関わらず観客をほっこりさせてくれた。

そんな不思議な世界観を支える役者陣が非常に豪華絢爛。「サウンド・オブ・ミュージック」(64)の大御所クリストファー・プラマー、「刑事ナッシュ・ブリッジス」(96)のドン・ジョンソン、「トゥルーライズ」(94)のジェイミー・リー・カーティス、スターウォーズシリーズのヨーダ役のフランク・オズに対し、「ブレードランナー2049」(17)、そして今年の007最新作でボンドガールを務めるアナ・デ・アルマスと熟練と若手の曲者キャラがぶつかり合うドラマがこの王道ミステリーに更に濃密さを与えている。

続編製作も決定したようなので、それも踏まえて鑑賞をオススメしたい。
しんご

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